2015年の農業所得見込みを下方修正(米国)
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は11月24日、米国の農業部門の所得見通しを公表した。これによると、2015年の米国の農業現金所得は前年比27.7%減の930億米ドル(11兆3460億円:1米ドル=122円)、農業純所得は同38.2%減の559億米ドル(6兆8198億円)と見込まれており、それぞれ8月時点の予測から6.9ポイント、2.2ポイント下方修正された(図)。もし、この予想通りとなれば、農業純所得は過去最高であった2013年から54.7%の低下となり、名目値および実質値の双方で2002年以来の最低水準となる。なお、農業純所得に比べ農業現金所得の減少幅が小さいことについて、USDAは生産者のキャッシュフロー管理が奏功していることを要因に挙げている。
※農業現金所得および農業純所得について
農業現金所得は、農産物の販売収入、政府補助金収入、農業関連収入(農業機械の貸し出しや観光農園などの収入)の合計(総農業現金収入)から、農業を行うための費用および借入金の利子などの現金支出額を控除したものであり、キャッシュフローの指標となる。
農業純所得は、総農業現金収入に非現金収入(農家自家消費分の現金相当額など)を加えた額から、在庫相当額の変化を反映させ、現金支出額および非現金支出額(減価償却額など)を控除したもの。農業現金所得に加え、直接現金の増減として表れない収入や費用も反映している。
農業所得の減少については、飼料穀物と畜産での収入減が大きく影響しているとみられている。USDAによると、飼料穀物の収入は、前年比13.4%減の575億米ドル(7兆150億円)と見込まれており、特にトウモロコシの収入見込み額は464億米ドル(5兆6608億円、前年比15.6%減)と前年をかなり大きく下回っている(表)。
また、畜産の収入は、牛、豚、牛乳および乳製品、家きん肉の価格が軒並み低下していることから同12.0%減の1868億米ドル(22兆7896億円)と予測されている。こうしたことから、USDAは2015年の農業部門への政府補助金を前年比10.4%増の108億米ドル(1兆3176億円)と見込んでいる。
今回の公表には、農家の負債状況も含まれており、資産に対する負債の割合が上昇していることが示されている。しかし、USDAの分析によれば、負債の増加は主に生産費を要因として生じており、高い農地価格に支えられ、農家の財務状況は依然として健全であるとしている。
【野田 圭介 平成27年11月30日発】
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