欧州委員会は、12月1、2日に開催された欧州農業観測会議で畜産物の中期需給見通しを公表した。このうち、乳製品に関しては、人口の増加と開発途上国での食の多様化などが進むことで、2025年までには需給バランスが改善されるとしている。この間、世界の乳製品輸入量は年率2%程度増加する中で、欧州の生乳出荷量は年率1%近い増加により、2025年には1億6400万トン(2015年比9.7%増)に達するとしている。また、現在の低迷する乳価についてはやがて回復し、2020年〜2025年には生乳100キログラム当たり平均36ユーロ(4,824円:1ユーロ=134円)にまで上昇するとした。しかし一方で、国際的に取引される乳製品は、生産量のわずか7.5%程度と底が浅いことから需給バランスの乱れるリスクは高いとみている。
さらに、今後10年間で増産されるEUの生乳の半分は主に脱脂粉乳などの粉乳類に仕向けられ、それらは輸出に向けられ、残りの3割はチーズに仕向けられ、これらは域内需要に吸収されるとしている。
食肉に関しては、途上国の人口増加と経済成長により食肉の需要が増えることから、それらの国へのEU産食肉の輸出が増えるとしている。牛肉の生産見通しとして、酪農部門の飼養頭数増の影響により短期的には増産となるが、2016年をピークに緩やかに減産となり、2025年には755万トン(2015年比3.9%減)となるとしている。
豚肉の生産については、緩やかに増産を続け、2025年には2382万トン(2015年比1.7%増)に達するとみており、域内消費はわずかに減少するものの輸出需要が堅調に推移するとしている。
また、1日に行われた会議では、欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当委員と米国農務省のビルザック長官との公開討論が行われ、現在、EUと米国との間で交渉中の環大西洋貿易投資協定(TTIP)に話題が及んだ。この中で、地理的表示(GI)や遺伝子組み換え(GM)作物などの取扱いについて、双方での意見の隔たりはあるものの、基本的には消費者への安全な食料供給という共通の目的があることから、議論を深めれば合意に達するとの見方で一致した。