フォンテラ社、生産者支払見込み額を上方修正 ―8〜10月期の業績改善が影響―(NZ)
ニュージーランド(NZ)最大手の乳業メーカーであるフォンテラ社は11月16日、2015/16年度(6月〜翌5月)生産者に支払う配当金を、1株当たり0.05NZドル(4円、1NZドル=83円)引き上げ、0.45〜0.55NZドル(37円〜46円)とすると発表した。
通常、生産者は生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1キログラムに対して1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者乳価に配当金を上乗せした金額となる。
生産者乳価の支払見込みは、乳固形分1キログラム当たり4.60NZドル(382円)のまま維持されるが、配当金が引き上げられることで、最終的な生産者への支払見込み額は、5.05〜5.15NZドル(419円〜427円)へと増加する(表)。
同社は、今回の配当金引き上げに至った要因として、8〜10月の四半期におけるコスト削減と利益率の向上による業績の改善を挙げている。2015年8月〜10月期の設備投資は2億5800万NZドル(214億円)と前年同期比37%減と大幅に減少し、事業費は6億2800万NZドル(521億円)と同4%減とやや減少した。利益率については、前年同期を9ポイント上回る23%となった。
利益率上昇の背景には、コモディティ製品の国際価格の回復と、高単価乳製品の増産がある。NZの生乳生産のピークである10月の集乳量は、2014/15年度の乳価安による酪農家の増産意欲の減退や、春先の天候不順による牧草の生育不良などの要因が重なり、前年同月比4%減(北島は6%減、南島は1%減)となった。同社は、集乳量が減少傾向にある中、粉乳などのコモディティ製品の国際価格が回復傾向にあることや、より利益率の高い消費者向け高単価乳製品の増産体制を整え、生乳を優先してそちらに仕向けたことによって、利益率が上昇したとしている。
なお、11月25日に行われた年次総会でも、同社は利益率の改善を強調したが、株主(生産者)からは、経営体制のさらなる改善のため、取締役定数を削減すべきとの議案が提出された。同議案への賛成は投票総数の54%と、拘束力を持つ75%には届かなかったものの、過半数の支持を得たことを受け、今後、同社のガバナンス改革への動きが期待されるとの声も聞かれる。
【竹谷 亮佑 平成27年12月7日発】
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