米国保健福祉省(HHS)と米国農務省(USDA)は2016年1月7日、「米国人のための食生活指針(2015-2020 Dietary Guidelines for Americans)」を公表した。
※同指針の概要については、2016年1月14日付けの海外情報「『米国人のための食生活指針』、糖類摂取量の上限を初めて明記(米国)」を参照されたい。
同指針では、健康的な食生活様式の例として、野菜や穀物、たんぱく質食品といった食物グループごとに1日または1週間当たりの摂取量の基準を設定しており、個人の好みに合わせて選択できるよう「健康的な米国スタイル」、「健康的な地中海スタイル」、「健康的なベジタリアン」の3つのパターンが示されている。このうち「健康的な米国スタイル」の食生活様式では、1日2000キロカロリーの食事に対して、食肉(家禽肉を含む。以下同じ)、卵は1週間に26オンス(737グラム)、乳製品は1日にコップ3杯相当(牛乳で約711ミリリットル)を摂取することが推奨され、前回の基準が据え置かれた。なお、「健康的な地中海スタイル」では、「健康的な米国スタイル」よりも果物と魚介類の摂取量が多く、乳製品の摂取量が少なく設定されている。
また、食肉や卵からの摂取に偏りがちなたんぱく質については、魚介類やナッツ類などからの摂取も勧めている。特に、14〜70歳までの男性は、食肉および卵を推奨摂取量以上に摂取しており、一部を魚介類やナッツ類に置き換えることを推奨している。一方、乳製品については、全脂牛乳(Whole milk)や一般的な乳製品に代えて、低脂肪の製品を選択するよう推奨している。
なお、同指針を実行するための予算措置については、USDAが米国医学アカデミーとともに同指針を検討し、前回からの改訂箇所に関して科学的見地から同意するまで保留される。
同指針は、軍隊での食事やフードスタンプなど栄養関連施策の基礎とされることから、その見直しは今後の食肉の消費動向に大きな影響を与えることとなる。
このため、全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、2015年2月に公表された同指針改訂の基礎となる報告書における健康的な食生活様式に、赤肉(lean meat)が含まれていないとして抗議していたが、最終的には赤肉が含まれたことから、「消費者は、食生活指針が米国人に赤肉を勧めていることを知り、赤肉を食卓に出すことに対して信頼感を得た。」とするテキサス州の医師で肉牛生産者のコメントを紹介し、同指針への理解を示した。また、北米食肉協会(NAMI)のカーペンター会長は、「今回の指針は、食生活の多様性が健康な食生活につながることを示した。消費者は今後も、我々の(食肉)製品を楽しむことができる。」と歓迎の意を表した。