EUの脱脂粉乳公的買入申請量は、2016年に入り、ベルギーから2万2273トン、ドイツから1万8037トン、フランスから1万6464トン、ポーランドから1万5050トンなど計13カ国からの買入申請があり、同年3月29日時点で10万3749トンと上限枠のほぼ半数に達した。
EUの公的買入は、各加盟国の脱脂粉乳およびバターの卸売価格が、公的買入価格(脱脂粉乳は100キログラム当たり169.80ユーロ(2万1904円:1ユーロ=129円)、バターは同221.75ユーロ(2万8606円))を下回った場合、当該国の機関が、製造業者または取扱業者の申請に基づき同価格で買い入れるもので、EU全体で上限数量が定められている。
欧州委員会は、同年3月14日に特別追加支援措置として脱脂粉乳とバターの公的買入の上限数量を、当初の10万9000トン、5万トンから21万8000トン、10万トンへとそれぞれ引き上げる発表を行っている。特に、脱脂粉乳については、買入申請量が、年初からの3カ月弱で上限数量の95%にまで迫っていた。これは、前年1〜3月のEUの脱脂粉乳製造量(34.5万トン)の約3割に相当することとなる。
脱脂粉乳のEU平均卸売価格は、直近の3月21日の週で前年同期比21%安の100キログラム当たり163.50ユーロ(2万1092円)と、低迷が長引いている。バターの同価格は、同259.03ユーロ(3万3415円)となっており、脱脂粉乳同様に低迷が続くが、公的買入価格は上回っている。
欧州委員会は、現在のEU農畜産業の危機的状況に対する支援策の一つとして、1月末に脱脂粉乳とバターの民間在庫補助(PSA)の実施期間を延長しており、市場改善を図るため、PSAと公的買入を並行して継続実施していくことになる。なお、公的買入による在庫は需給を鑑みて放出することとなっているが、当面の需給はそのような状況にはなく、ホーガン農業・農村開発担当欧州委員は、決して市場をゆがめるような放出はしないと繰り返し公言している。