欧州委員会は4月11日、学校給食用供給事業として、これまで別々に実施してきた野菜・果実(以下「青果物」という)の供給事業と牛乳供給事業を一本化した事業の規則案が、定例農業理事会で承認されたと発表した。
EUでは、学校給食用青果物供給事業(以下「青果物事業」という)は2009年から、学校給食用牛乳供給事業(以下「学乳事業」という)は1977年からそれぞれ実施されているが、欧州会計監査院は2011年、効率化のため両事業の一本化を検討するよう提言し、それを受けて2017/18学校年度(8月〜翌7月)からの一本化に向けて紆余曲折の検討がなされてきた。
両事業の目的はほぼ同じであったが、仕組みや運営方法が異なることから一本化の議論は何度も難局に直面した。しかしながら、一本化により、運営面での効率化とともに両事業の相乗効果も期待されている。
新たな事業では、児童生徒への教育的効果がより重視されている。具体的には、子供たちに健康的な食習慣に改善する認識を持たせるという観点からの教育的効果と、持続的な環境に配慮した食料生産や食品残さ問題に対する認識を持たせるという社会的な教育的効果が期待されている。そのため、農場訪問、学校菜園、試食会、料理教室などのプログラムも用意されている。また、青果物の加工品や乳製品については、事業の対象となる品目が拡充された。
この新しい規則案は、欧州理事会の承認を経て、数週間のうちにEU官報に掲載され施行される。
また、本事業は、一本化後も現行と同様、加盟国の任意による実施となるが、加盟国の裁量が拡大している。なお、2016/17年度の実施国は、青果物事業については英国、スウェーデン、フィンランドの3カ国を除く25カ国、学乳事業については全28カ国となっている。
一本化後初年度となる2017/18年度は、EU予算として2億5000万ユーロ(312億5000万円:1ユーロ=125円)が確保されており、内訳として、青果物事業は前年度と同額の1億5000万ユーロ(187億5000万円)、学乳事業は1億ユーロ(125億円)となっている。また、20%を上限に事業間の流用も認められている。
前年度事業の対象となった児童生徒は、青果物事業で約1000万人、学乳事業で約2000万人であった。
加盟国の多くで子供たちの青果物と飲用牛乳の消費は減少しており、青果物については世界保健機構(WHO)が推奨している1日当たりの青果物摂取量400グラムを下回っている。一方で、子供たちの消費は青果物の加工品や乳製品などの加工製品へと移っている。
EUでは、子供の肥満が大きな社会問題となっており、WHOは2010年、EUの6〜9歳の子供のうち3人に1人が太り過ぎか肥満であるとした。2008年では、4人に1人とされていたことから悪化していることになる。
こうした状況下での一本化ということもあって、この事業に対する期待は高い。
欧州委員会は4月7日、青果物事業の最終年度となる2016/17年度予算について各加盟国への配賦額を公表した。青果物事業では、各加盟国はこのEU予算に自国予算を加えて実施することとされている。
青果物事業の予算の配賦は、学乳事業が6〜10歳の人数に比例しているのに対し、過去の実績に基づいており、今後、透明性、公平性の観点から改善の余地があるとされている。