日豪EPA、3回目の関税削減 〜豪州政府、輸出拡大を期待〜
日豪経済連携協定(日豪EPA)は、2016年4月1日、3回目の関税削減を迎えた。これに当たり、豪州のジョイス農務水資源相は1日、関税の削減や無税枠の拡大により、規模が大きいことに加えて高品質志向が強い日本市場へのアクセスが改善され、輸出額、輸出量の両面において、今後さらに一次産品の輸出拡大が期待されるとの声明を発表した。主な畜産物の関税削減スケジュールは、以下の通り(表)。
豪州から日本への牛肉輸出については、2014年は28万トン(うち冷蔵12万5000トン、冷凍15万5000トン)、16億豪ドルであったが、2015年には28万8000トン(うち冷蔵12万8000トン、冷凍16万トン)、19億豪ドルへと増加した(日本の牛肉輸入における豪州産のシェアは5割強)。輸出量の割に輸出額が増加したのは、日本国内で高価格帯の精肉需要の高まりを受け、穀物肥育牛の冷蔵輸出が増加したためとしている。
ただし、豪州産牛肉の月別輸入量を見ると、豪州で牛群再構築が進展し、牛肉生産量が減少していることや、豪ドル高で推移する為替相場の影響を受け、2015年の輸出額の増加を下支えしていた冷蔵牛肉の輸出量については、2016年以降、前年同月を下回って推移している(図1)。また、未通関在庫についても、大幅な積み増しが発生していないことから、2015年4月のような、関税率削減を見越した輸入数量の増加はないと見る向きもある。
豪州から日本へのチーズ輸出についても、牛肉輸出と同様の傾向がみられている。2014年は7万9000トン、1億9000万豪ドルであったが、2015年には8万9000トン、2億5000万豪ドルとなり、日本のチーズ輸入における豪州産のシェアは前年を上回った(図2)。チーズ輸出の主力であるプロセスチーズ原料用のナチュラルチーズについては、2016年4月1日以降、無税枠が5800トン(チーズ輸出量全体の6%程度)へと拡大する。
これ以外にも、オレンジやブドウなどの果物や、エビなどの海産物でも、2015年の輸出額が、対前年比1〜2割程度増加している。
豪州政府としては今後、一次産品に対する需要が世界的に拡大することが見込まれることから、インドネシアやインドなどのアジア各国との経済協定締結に積極的に取り組み、海外市場における豪州産一次産品の競争力を強化していきたいとしている。
【竹谷 亮佑 平成28年4月19日発】
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