中国、トウモロコシ臨時備蓄政策を停止
備蓄から作付面積に応じた直接支払い補助金へ
中国では、トウモロコシの安定供給を確保するため、2008年から北部4地域を対象としたトウモロコシの臨時備蓄政策を実施してきた。しかし、2015/2016年度(9月〜8月:作物年度)の期末在庫が国内生産量に匹敵する2億トン程度まで積み上がることが予想される中、現地報道によると、政府は2016年4月、国家発展改革委員会(以下「国家発改委」という)、財政部、農業部等の合意により、従来、中儲糧総公司(以下「中儲糧」という)が政府に代わって実施していた備蓄買付を停止し、取引を自由市場に委ねた上で、トウモロコシ生産農家に対する作付面積に応じた直接補助金の支払いに移行すると発表した。
補助額は1ヘクタール当たり1500元以上とされ、補助金交付手順は、中央財政(国務院財政部)が補助資金を省(区、市)に支払い、トウモロコシ生産者に交付される。 ただし、新政策実施により食糧販売に困難が生じた場合のため、国家発改委等は、中儲糧等の条件に合う企業が、必要な時期に市場に参入して最低価格により買付を行うスキームを残すとしている。
今回の備蓄政策変更により、国内生産量を抑えることで、増嵩する在庫処理の方法として数量的にも直接的な効果が期待されるほか、2007年以前の実績からみると韓国、日本をはじめアジア各国などへの輸出を再開する可能性もあるとしている。
他方、わずかではあるものの、中国はトウモロコシを一定量輸入しており、2015年は500万トン弱程度の輸入実績がある。以前は米国からの輸入が大勢を占めていたが、GM混入問題を機に激減、これに代わって、直近では2012年のウクライナ農業開発プロジェクトの現物返済としてウクライナからの輸入が増加しており、今後も一定量の輸入が見込まれる。
従来のトウモロコシ臨時備蓄政策の概要(2008〜2016年)
・実施目的:栽培農家の利益保護、食糧生産安定化、食糧安全保障のため
・実施開始時期:2008〜2016年
・実施地域:遼寧、吉林、黒竜江、内モンゴル
・実施主体:中儲糧総公司
トウモロコシ需給安定のための新たな政策(2016年〜)
農業部栽培業管理司副司長は、2016年、東北3省及び内モンゴル自治区におけるトウモロコシ臨時備蓄政策を停止し、「市場化買付」と「補助金」(面的直接支払)に変更するとした。
「市場化買付」:トウモロコシの価格は生産と需要により調整され、市場の需給関係を反映して
形成される。生産者は、市場価格でトウモロコシを売り出し、各需要者は自由に市場に
参入して買付する。
「補助金」:主要生産地域※のトウモロコシ作付収益の安定を図るため、トウモロコシ生産者に
対し一定の補助金を作付面積に応じて直接支払いする。
中央財政が補助資金を省(区、市)に支払い、トウモロコシ生産者に交付される。
具体的な補助金交付方法は、国務院の許可を受けてから公布される予定。
※:黒竜江、吉林、遼寧、河北、山東、華南、内モンゴル自治区
参考資料:遼寧の金農網 (http://www.lnjn.gov.cn/news/nongyeyaowen/2016/3/597769.shtml)
【木田 秀一郎 平成28年4月19日発】
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