下院が大統領の罷免を採択(ブラジル)
ブラジルの連邦下院議会は4月17日、ルセフ大統領の罷免決議案を賛成多数で採択した。定数513のうち、賛成が367票と、採択に必要な定数の3分の2を上回った。また、反対が137票、棄権7票(欠席2名)であった。ルセフ大統領は、財政悪化を隠すべく、政府会計を不正に操作した疑いを問われており、予想を上回る賛成票が投じられた。
これにより、罷免審議は、次の段階として上院議会に移される。上院での投票は現時点で5月上旬に予定されており、上院議員定数81の過半数(41名)が罷免に賛成した場合、ジウマ大統領には最大180日間の職務停止処分が科せられ、テーメル副大統領が暫定的に大統領を務めることとなる。さらに、最高裁長官が統括する形で上院にルセフ大統領の弾劾法廷が設置されて審議が行われ、定数の3分の2以上の54名が賛成すれば、弾劾が成立して失職し、テーメル副大統領が正式に大統領に繰り上がる形で2018年までの任期を務めることとなる。
最大議席を有するブラジル民主運動党(PMDB)が3月に連立政権を離脱して以降、ルセフ政権の求心力は一気に低下している。同国では1992年に当時のコロル大統領が汚職により弾劾裁判にかけられ、辞職に追い込まれた前例がある。
農畜産物の輸出への影響
為替相場は2016年3月以降、ジウマ大統領の罷免審議が進むに連れ、弾劾の可能性が高まっていることから、経済の好転に期待する見方が強まりドル安レアル高基調で推移している。
同国中央銀行は4月12〜14日の3日間に約200億ドルを投じて為替介入を行って為替相場の均衡を維持しようとしているものの、現地報道によると、弾劾の可能性が濃厚になれば、更にレアル買いが進展して1ドル当たり3.2レアル〜3.3レアルに上昇する可能性が出てきている。レアル高基調により、ブラジルの農畜産物を含む輸出品の価格優位性が薄まる可能性もあり、ルセフ大統領の罷免審議の動向に注目が集まっている。
【米元 健太 平成28年4月19日発】
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