EUの乳製品卸売価格は、生乳生産量の増加や2014年8月から実施されたロシアによる農畜産物の禁輸措置の影響などにより下落し、2015年7月、6年ぶりに脱脂粉乳の公的買入が開始された。
脱脂粉乳の公的買入は、各加盟国の買入機関が脱脂粉乳の製造業者または取扱業者の申請に基づき、公的買入価格(100キログラム当たり169.80ユーロ(2万1225円:1ユーロ=125円))で、限度数量の10万9000トン(EU全体、暦年ベース)まで買い入れる。限度数量に達した後は、月2回、入札により公的買入価格を超えない価格での買い入れが行われる。
公的買入は、開始以降、毎週連続して実施され、2015年末までの6カ月間で4万280トンが買い入れられた。
しかしながら、脱脂粉乳の卸売価格は、2016年1月の第1週に公的買入開始以降の最安値を更新し、1週当たりの買入申請量は、過去最高となる6360トンを記録した。その後も度々、買入申請量の記録は更新され、3月14日の週に1万3748トンを記録し、3月末には限度数量に達して申請は打ち切られ、最初の入札が4月19日に行われた。2日後の21日に公表された結果によると、2万2623トンが買い入れられた。落札価格は公表されていないが、ほぼ公的買入価格であったと言われている。
ホーガン農業・農村開発担当欧州委員が、3月14日の農業理事会で公表した特別追加支援措置としての公的買入の限度数量の引き上げは、4月20日から適用されることとなったことから、入札による公的買入れはこの1回のみとなり、これ以降は、公的買入価格で、限度数量の21万8000トンまで買入れが行われることとなる。
2016年2月の生乳生産量は公表前であるが、前年同月を9%近く上回ると見込まれている。1月の前年同月比5.3%増に続いて、増産基調はむしろ加速している。
生乳増産分の多くは、脱脂粉乳やバターに仕向けられ、1月の脱脂粉乳の生産量は前年同月比12.5%増となっている。需要は引き続き停滞しており、増産された脱脂粉乳の多くが公的在庫に回されている。その結果、限度数量は2倍に引き上げられたものの、今年の秋頃には再度上限に達するとの見方もある。
なお、公的買入は、バターも対象品目となっているが、バターの卸売価格は、現在、100キログラム当たり251ユーロ(3万1375円)と、前年同期を21.9%下回っているものの、公的買入価格の同221.75ユーロ(2万7719円)を上回っていることから、現在のところ公的買入への申請は行われていない。