豪州大手乳業メーカー、生産者支払乳価を1割超引き下げ
豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は、2016年4月27日、同社の2015/16年度(7月〜翌6月)の利益見通しを、当初見通し(8900万豪ドル(74億円:1豪ドル=83円))の半分以下となる3900〜4200万豪ドル(32〜35億円)に引き下げると発表した。
これに伴い、MG社の生産者支払乳価についても、乳固形分1キログラム当たり5.60豪ドル(465円)から同4.75〜5.00豪ドル(394円〜415円)へ1割を超える引き下げを決定した。しかしながら、MG社は、2015/16年度に酪農家へ実際に支払われる額については、酪農家への緊急支援策を講じることにより、同5.47豪ドル(454円)を保証すると併せて発表した(図)。
今回の乳価引き下げの背景
MG社は、今回の生産者支払乳価の引き下げについて、
(1)中国の乳製品需要回復の遅れに伴う、成人向け粉乳の中国向け販売の低迷
(2)豪ドル高で推移する為替相場による、同社売上高の約4割を占める輸出事業の不振
(3)乳製品国際価格の低迷による、在庫の評価損
などを要因としている。MG社は、2015/16年度の生産者支払乳価について当初、乳製品国際価格の上昇を受け、最終的には同6.05豪ドル(502円)程度まで回復するとの強気の見通しを示していたが、利益見通しの大幅な修正を迫られ、引き下げに踏み切ったとみられる。
緊急支援策(Milk Supply Support Package)の概要
生産者支払乳価の引き下げと併せて発表された支援策は、今年度の最終的な生産者支払乳価と保証水準との差額を、MG社自身が借り入れた資金を投入して補填する(資金については同社が向こう3年かけて返済)もので、総額1.4〜1.9億豪ドル(116〜158億円)程度となると見込まれている。この支援策は、酪農家に対する融資ではなく、あくまでもMG社による補填であるため、個々の酪農家が新たに債務を負うものではないとしている。
一連の発表に対する市場や業界の反応
MG社のヘルー社長は、利益見通しの大幅な引き下げの責任を取る形で辞任を表明した。また、今回の発表を受け、1株2.14豪ドル(178円)であったMG社の株価は、一時1.42豪ドル(118円)まで大幅に下落し、取引が一時的に中止となった。
国内の他の乳業メーカーは、乳価を据え置くケースもあり、対応は一様ではない(表)。
MG社は今後、主要な生乳生産地域で、今回の発表内容について酪農家向けに説明会を実施する(全7回予定)としているが、同社に対しては、年度当初の見通しが楽観的すぎたのではないか、あるいは、会社経営上の問題があったのではないか、といった疑念の声が上がっており、現地報道によると、今回の乳価引き下げに対して集団訴訟に踏み切る投資家もいるとしている。
※ 6月1日:本文を一部訂正いたしました。
【竹谷 亮佑 平成28年5月9日発】
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