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南アフリカ共和国向け米国産牛肉輸出再開後の第一便が現地に到着(米国)

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 米国農務省(USDA)は5月16日、今年初めに南アフリカ共和国向けの米国産牛肉輸出が再び解禁されたことを受け、米国から輸出された牛肉の第一便が現地に到着したと発表した。

 ビルサック農務長官は、「今回の米国産牛肉の第一便の到着は、USDAや米国通商代表部(USTR)がこの重要な南アフリカというマーケットへのアクセス回復に努めてきた過程における重要な一里塚になることを示している。今般、同国の消費者は高品質・安全・健康に良い米国産の畜産物を食すことができるようになる一方で、米国の生産者は価値のあるマーケットを得ることとなった。」とコメントしている。
 
 2016年1月6日、両国は2年以上に及ぶ集中的な検疫協議の結果、米国から南アフリカ共和国に輸出される、牛肉、豚肉、家きん肉に係る衛生条件および関連する証明書の様式について合意に至った。これらの畜産物は、いずれも過去に輸出が可能であったものであり、家きん肉については2000年以来、牛肉については2003年以来、豚肉については2013年以来の再開となる。USDAによると、今回の輸出再開により、米国から南アフリカ共和国への肉類の輸出額は、年間7500万米ドル(82億5000万円。1ドル=110円)に達すると考えられている。

 なお、オバマ政権では、米国産農産物を含む米国製品の輸出拡大に勢力的に取り組むことで、同政権下における過去7年間のうち6年間で過去最高の輸出額を記録しており、農産物については、2009年度から2015年度の間に合計9196億米ドル(101兆1560億円)の輸出額を記録している。

 米国は2013年5月にパリで開催されたOIE(国際獣疫事務局)総会において、国際的なBSE(牛海綿状脳症)の安全性格付けの最上位である「無視できるBSEリスク」の国に日本と同時に認定された。昨年、USDAは米国のさまざまな輸入相手国に対し、残存するBSEに関するあらゆる規制を撤廃するよう働きかけるキャンペーンを展開した。
 USDAによると、このキャンペーンの結果、豪州、マカオ、フィリピン、ニュージーランド、シンガポール、ウクライナ、ベトナム、エジプト、レバノン、トルコ、コスタリカ、グアテマラ、セントルシア、イラクの14カ国において、BSEに関する規制が緩和または撤廃されたほか、米国産牛肉製品の輸入に関する条件が緩和され、これらのBSEに関連する規制の変更により、合計1億8000万米ドル(19億8000万円)以上輸出額が増加し得るとのことである。
 ただし、上記14カ国については、米国産牛肉の豪州への輸出を例にとってみても、未だに輸出が叶っていない状況にあるように、BSEに関する規制が緩和または撤廃されたものの、その他の動物検疫や公衆衛生に関する協議の状況が整っていないなどの理由から、具体的な輸出には至っていないケースが多く認められることには留意が必要である。

 なお、USDA発表の統計データにおいて、以前に南アフリカ共和国向けの輸出が可能であった期間における直近10年間の年間最大輸出量を見てみると、牛肉は548トン(1998年)、豚肉が919トン(2012年)であるのに対し、鶏肉が3万8772トン(1997年)である。さらに、輸出再開が決まった本年1月以降においても、家きん肉の同国への輸出量が第1四半期だけで約1万2000トン、額にして720万米ドル(7億9200万円)に達していることからも、同国への輸出は家きん肉がその多くを占めていることが確認できる。
 また、同国全体の輸入量を見ても、家きん肉は年間約40万トン(2014年)を輸入しているのに対し、牛肉は約2万5000トン(2014年)、豚肉は約1万9000トン(2014年)と、牛肉および豚肉の輸入量は比較的少ないことがわかる。

 このため、今般、米国から南アフリカ共和国へ牛肉、豚肉、家きん肉といった畜産物の輸出が再開されたことは、米国にとって一つの契機になると考えられるが、周辺データ等から考察するに、牛肉および豚肉の同国への輸出量は、米国内の需給に大きな影響を与えるものとは考えにくく、家きん肉の輸出が中心になると推察される。
【調査情報部 平成28年5月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397