ブラジル政府は6月9日、公的食糧備蓄に関する省庁間評議会(CIEP)の決定を受け、国家食糧供給公社(CONAB)の公的備蓄トウモロコシのうち、主にマットグロッソ州で保管されている50万トンを競売により放出することを決定した。
CONABによる備蓄トウモロコシの放出は、今年2月の50万トンの放出以来となる。現地穀物情報サイトによると、CONABが保有する備蓄トウモロコシは90万トン程度であり、今回の放出により、残りは40万トンに減少すると見込まれている。なお、落札者はトウモロコシをマットグロッソ州から需要地まで輸送する必要があることから、コスト高の特効薬とはならない可能性もあるとの指摘もある。
CONABが6月9日に公表した2015/16 年度主要穀物の生産状況等調査結果(第9回)では、主産地の中西部やマトピバ地域にかかるセラード地域で乾燥傾向が長引いた影響により、トウモロコシの生産量見通しが前年度比10%減の7622万トンにまで引き下げられた。
同国では、飼料原料としてトウモロコシが1日当たり15万トン程度必要と推計されているが、南部や北東部を中心に需給逼迫に伴うトウモロコシの相場高が続いており、養豚、養鶏や酪農の生産コスト増加と収益性悪化が深刻化している。農務省(MAPA)のネリ・ゲレール農業政策局長は、相場高で輸出仕向け分を国内向けに買い戻す動きが見られることも報告している。また、大手食肉企業や飼料メーカー等は、隣国パラグアイやアルゼンチンからのトウモロコシ輸入を増やしているほか、小麦など代替原料の活用もみられるものの、依然として絶対量が足りない状況が続いている。
現在、同国では第2期作の収穫が本格化しつつあり、相場がある程度落ち着きを取り戻すとの見方も出ているが、南部パラナ州の一部で気温が大幅に下がって降霜が観測されたとの情報もあり、作柄への影響に対する関心が集まっている。