一次産業省、2019/20年度までの畜産物需給見通しを公表(NZ)
ニュージーランド(NZ)一次産業省は12月15日、2020/21年度(7月〜翌6月。ただし、生乳生産量は6月〜翌5月)までの一次産品の需給見通しを公表した。このうち、乳製品と牛肉の需給見通しについては、以下の通り。
【乳製品】生乳生産量は増加基調、乳製品輸出は徐々に持ち直す
2016/17年度の生乳生産量は、乳固形分ベースで前年度比1.7%減の183万トンと見込んでいる(図1)。これは、春先の天候不順に伴う牧草の生育不良や栄養価の不足により、生乳生産量のピークを迎える10月に前年同月比6.1%減とかなりの程度減少したことに加え、昨年度まで2年続けて生産者乳価が低かったことから酪農家の増産意欲が減退したことによる。
2017/18年度は、天候の回復による牧草生育環境の好転に伴い、1頭当たり乳量が増加し、前年度比3.8%増の190万トンとなるとしている。乳製品の国際的な需給バランスの均衡による生産者乳価の回復も、酪農家の増産インセンティブになるとしている。
また、経産牛飼養頭数は、生産者乳価の引き下げを受け経産牛の淘汰が進んだことで、2015/16年度は前年度を下回ったが、2017/18年度は500万頭(同0.4%増)と前年度をわずかに上回り、その後も増頭傾向が続くとしている。
2016/17年度の乳製品輸出については、生産減に伴い輸出量が減少(320万トン、同1.0%減)する一方、輸出額は乳製品国際価格の上昇に伴い前年度を上回ると見込んでいる(137億NZドル(1兆1600億円、1NZドル=85円)、同3.0%増)(図2)。2017/18年度以降は、中国の乳製品需要の回復やEUなど主要な生産地域での減産に伴い、乳製品の国際的な需給バランスが均衡し、輸出量と輸出額はともに前年度を上回って推移していくとしている。
一方、輸出量は、2015/16年度は、乳製品国際価格の下落に伴い東南アジアや北アフリカ、中東諸国の需要増加に伴う全粉乳の輸出増を受け、全体では320万2000トン(同2.2%増)となると見込んでいる。2016年末以降は、主要な輸出先である中国の需要回復に伴い、増加傾向で推移すると見込んでいる。
【牛肉】 2015/16年度以降減少も、輸出量は高い水準で推移
2016/17年度の牛肉生産量は、これまで2年間続いた高水準でのと畜が一段落し、62万2000トン(前年度比7.6%減)と平年並みの水準に落ち着くと見込んでいる(図3)。これは、主要な輸出先である米国の国内生産の回復に伴う輸入需要の減退によるものである。乳製品国際価格の低迷に伴う乳価引き下げによって、ここ2年間は乳牛淘汰が増加していたが、これも今後落ち着きを取り戻すとみられることから、牛肉生産量は減少傾向で推移するとしている。
また、肉牛飼養頭数については、今後、国際的な牛肉価格安を受け、肥育農家のもと牛導入意欲の低下が見込まれることから、2020/21年度にかけて、減少傾向で推移するとしている。
2016/17年度の牛肉輸出額は、国際相場が下落していることもあり、25億9000万NZドル(2200億円、同16.3%減)と前年度を大幅に下回ると見込んでいる(図4)。また、輸出量も、主要な輸出先である米国における国内生産の回復や、米国や中国などで安価なブラジル産との競合もあり、2020/21年度にかけて、わずかながら減少傾向で推移するとしている。
今後の見通しについては、最大の輸出先国である米国における牛群再構築の完了や、競合するブラジル産牛肉の輸出増といった影響はあるものの、牛肉に対する需要自体は世界的に増加傾向にあるため、輸出量、輸出額ともに、比較的高い水準での推移が続くとしている。
【竹谷 亮佑 平成28年6月21日発】
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