ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)によると、2015/16年度(7月〜翌6月)におけるEU向けのヒルトン枠(注)の消化率は、直近10年間で初めて9割を超えた。
ヒルトン枠が適用される牛肉は、ブラジルの場合、離乳後牧草で肥育された去勢牛または未経産牛でトレーサビリティシステムに対応した牛のうち、ブラジル農務省(MAPA)の定める牛枝肉格付けにおいて脂肪厚2または3の「B」に分類されたものとなっており、年間割り当て数量は1万トンに設定されている(表)。ヒルトン枠の対象となる牛肉は、輸出単価が高く、関税が通常よりも下がるため、牛肉生産・輸出企業には大きなメリットがある。
ABIECによると、2006/07〜2013/14年度において、ブラジルのヒルトン枠の消化率は4割前後にとどまっていたが、2014/15年度は79.9%、そして2015/16年度は92.9%に達した。その要因として、EU国内の需要が増加していることに加え、ブラジルの牛肉生産・輸出企業がヒルトン枠に対応した肉用牛に対してプレミアムを支払うようになった結果、高級牛肉の生産が拡大したことが挙げられる。また、国内経済の悪化で牛肉消費が低迷し、高級牛肉の輸出余力が拡大したことも要因として考えられている。
(注)ヒルトン枠…
EUにおける高級牛肉の低関税輸入枠のことで、1979年に当時の東京ヒルトンホテルで開催されたGATT東京ラウンドにおいて、EUと牛肉輸出国との交渉により低関税輸入枠を設けることが合意されたことから、ヒルトン枠と呼ばれている。
ヒルトン枠の関税は20%となっている。一方、ABIECによると、通常のEUの牛肉輸入関税は、従価税(12.8%)と従量税(100キログラムごとに303.4ユーロ)が組み合わされている。