乳製品の短期需給見通しを公表(EU)
欧州委員会は2016年7月8日、農産物の短期需給見通しを公表した。このうち2016年の乳製品需給見通しの概要を以下のとおり紹介する。
生乳出荷量は前年比1.4%増
2016年の生乳出荷量は、前年比1.4%増と見込まれている。2016年1〜4月の累計(実績)は、生乳クオータ(生産上限枠)最終年度となった昨年1〜3月の生産量が、多くの国でクオータ超過課徴金を避けるためにブレーキが掛けられていた反動もあり、前年同期比5.5%増とかなりの増加となった。一方、2016年後半については、生産者乳価が前年を大きく下回って推移する中、生産者の増産意欲が減退していることから、前年を下回って推移すると見込まれている。また、飼料用大豆ミールなど飼料価格の高騰が生産者の経営収支を圧迫し、アイルランドとイタリアを除く主要生乳生産国において雌牛の淘汰が進められていることも本年後半の減産要因となっている。
乳製品価格には回復の兆しが出るも、生産者乳価は依然低迷
7月第2週の価格は、価格の底だった5月第1週と比較してバター12.8%高、全粉乳16.7%高、ホエイパウダー16.7%高と大きく上昇している。上昇率の低い脱脂粉乳4.9%高、チェダーチーズ3.6%高、ゴーダチーズ6.9%高なども総じて回復の兆しが見られている。
しかしながら、生産者乳価は1月以降一貫して下落しており、2016年5月のEU平均生産者乳価は、100キログラム当たり26.30ユーロ(3007円:1ユーロ=117円)と前年同月を14.4%下回っている。6月も下落が見込まれるものの、下落率は縮小し、7月以降には回復が期待されている。
5月の乳価の動向は加盟国間で大きく異なっており、ロシアの禁輸措置の影響が大きいバルト三国は最も低い水準にあり、リトアニアは同18ユーロ(2106円)、ラトビアは同19ユーロ(2223円)をそれぞれ下回っている。また、スペイン、イタリア、フランスでは前年同月比1割安となっているが、アイルランド、チェコ、ハンガリー、英国では同2割安となっている。さらに、生産者単位においても、出荷する生乳の仕向ける用途や契約の仕方によって販売乳価は大きく異なっている。
積み増す脱脂粉乳在庫
一方、2016年1〜4月の乳製品生産量は、脱脂粉乳が前年同期比18%増、バターが同12%増と生乳出荷量の増加を上回る増産となり、生乳の余剰分が脱脂粉乳とバターに仕向けられていることが分かる。そして、同期間において生産された脱脂粉乳の3割が公的買入に申請されている。
2016年の脱脂粉乳の生産量は、前年を4.5%上回る160万トンと過去最大になると見込まれている。脱脂粉乳の輸出量は、1〜4月の累計で前年同期を大きく下回り(8%減)、年後半は幾分持ち直すとされるものの年間では3.5%減と見込まれている。この結果、期末在庫は55万トンになり、このうち43万トンが公的買入に申請され、繰越在庫と合わせて少なくとも47万トンが公的買入分と見込まれている。公的買入価格での買入れ限度数量は、6月30日の2回目の引き上げで35万トンとされたところであるが、さらなる引き上げがなければ、入札による買入れや調整保管(PSA:民間在庫補助)により市場隔離されることになる。
バターについては、調整保管は実施されているものの、公的買入価格を一貫して上回っていることから、公的買入は実施されていない。中東、米国、モロッコ、日本などへの輸出需要が堅調であり、価格は回復傾向にある。2016年の生産量は、前年を3.2%上回る243万トンと見込まれているが、輸出量はそれを大きく上回る同28%の23万トンと見込まれている。
【調査情報部 平成28年7月15日発】
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