欧州委員会、困窮する生産者の支援に5億ユーロの追加補助を公表(EU)
欧州委員会は2016年7月18日、低迷する市況などにより困窮する生産者への支援として5億ユーロ(590億円:1ユーロ=118円)の新たな補助を公表した。これは、昨年9月の支援策および本年3月の追加支援策に続く追加の支援となる。
この新たな支援策は、同日に開催された7月の定例農業理事会においてホーガン農業・農村開発担当欧州委員によって提示された。同委員は「厳しい予算の制約がある中、この予算を確保した。我々の目標は、価格が回復することであり、生産者の経営が生産物の対価で成り立ち、安全で高品質な食品を市民に提供し、農村地域と雇用そして公共財を供給するという貢献をすることである。」と語った。支援策の概要は以下のとおりである。
支援策の概要
1.生乳出荷削減奨励金(1億5000万ユーロ:177億円)
現在の生乳価格の低迷は供給過多により起きていることから、EU全域にわたって市場への生乳の供給量を減らすため、10月1日から12月31日の間に前年同期と比較して削減した生乳出荷量に応じて生産者に補助する。2017年1月1日以降も減産した生産者に対して予算の範囲内で補助を続ける。
2.加盟国の裁量による支援(3億5000万ユーロ:413億円)(生乳など畜産部門)
加盟国が自国の状況に合わせて、欧州委員会が提示する事業の中から選択し、もしくは組み合わせて、欧州委員会から配賦される予算により実施する(表)。加盟国は、配賦された予算に自国の予算を上乗せして補助額を2倍にまで引き上げることができる。本支援は、生乳の需給バランスの改善を目的とするが、困窮する他の畜種も対象にできる。
3.その他支援策
・カップリング支払の見直し(生乳)
各加盟国が生産量の維持を目的に一部認めているカップリング支払について、生乳を減産しても当初の受給資格を維持できるよう変更することを可能とする。
・公的買入の実施期間の延長(脱脂粉乳)
脱脂粉乳の公的買入の期限を本年9月末から2017年2月末まで延長する。2016年の公的買入価格による買入限度数量を35万トンに据え置く。2017年の同数量については、規定どおりの10万9000トンとする。
・調整保管の実施期間の延長(脱脂粉乳)
調整保管(PSA:民間在庫補助)の従来事業(保管期間:90〜210日間)と特別事業(保管期間:365日)の期限を本年9月末から2017年2月末まで延長する。
・前払い
2016年10月16日以降の直接支払いについては70%まで、農村振興政策による支払いについては85%まで前払いできるものとする。
・野菜・果実に対する補助単価の見直し
生産者団体による野菜・果実の市場隔離および収穫放棄に係る補助単価を見直す。
なお、支援策の具体的な内容については、引き続き検討され、関連規則は9月中旬に整備される予定である。
【調査情報部 平成28年7月27日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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