NZの畜産経営者の意識調査、前回から大幅に改善
ニュージーランド(NZ)の農業者団体である、ニュージーランド農業者連盟は7月、農業経営者の向こう6カ月程度の経営見通しについての意識調査結果を発表した。同調査は、年2回、NZの会計年度(7月〜翌6月)の始期となる7月と年度中期の1月に実施されているものである。以下、「酪農」および「食肉・羊毛」の収益性見通し、生産見通しなどについて、概要を紹介する。
収益性見通し 酪農、食肉・羊毛ともに「悪化」が減少
今後の収益性見通しについて、酪農では、「改善」と回答した割合が前回より増加し、「悪化」の割合が大幅に減少したものの、「改善」引く「悪化」はなおも▲9.4とマイナスとなっている(図1)。これは、最大手の酪農協系乳業メーカーであるフォンテラ社が発表した2016/17年度の生産者乳価が、乳固形分1キログラム当たり4.25NZドルと前年度の同3.9NZドルより改善しているものの、乳製品の国際価格の最近の動向やNZドル高から前年度並となるおそれもあることによる。
また、食肉・羊毛についても、「改善」が増加した一方、「悪化」が大幅に減少したものの、「改善」引く「悪化」はなおも▲5.5とマイナスとなっている(図2)。これは、昨年下落した食肉価格が、引き続き低迷していることを反映していると見られる。
生産見通し、酪農、食肉・羊毛ともに「増加」が増加
生産見通しについては、酪農、食肉・羊毛ともに「増加」の割合が増加し、「減少」の割合を上回っている(図3、4)。酪農は、厳しい経営環境が続くと見込まれている中でも、最近の気象条件が良く、牧草の生育が順調なことが背景にあると思われる。
一方、食肉・羊毛は、取引価格が下落しているものの、収益性が酪農よりよい状況にあることが背景にあると思われる。
懸念事項では、「商品価格」が引き続き首位
さらに、農業経営に係る懸念事項についても調査が行われている。酪農、食肉・羊毛ともに、前回に引き続き最大の懸念事項として「商品価格」と回答した割合が最も多くなっている(図5、6)。
酪農では、生産者乳価がわずかに上昇したとはいえ、引き続き低い水準にあり、生産者乳価に影響を及ぼす乳製品国際価格に引き続き関心が高いことが伺える。食肉・羊毛についても、酪農同様、商品価格が最大の関心事項となっている。
一方、前回の調査時には上位に挙げられていた「気象条件」は、気象条件の改善に伴い、酪農では前回の4位(7.5%)から10位(2.3%)に、食肉・羊毛では2位(21.1%)から3位(13.3%)に順位を下げている。
政府への主な要望、酪農は「金融政策」、食肉・羊毛は「貿易政策」がトップ
最後に、政府への主な要望事項についても調査が行われている。
酪農では、「金融政策」を要望事項として挙げた人の割合が、前回の2位(11.7%)から1位(16.7%)に上昇している(図7)。NZドル高の緩和、低金利の継続、物価上昇率の低下を志向し、金融政策に酪農家の関心が集まっているものと思われる。
一方、食肉・羊毛では、「貿易政策」を要望事項として挙げた人の割合が、前回の2位(9.2%)から1位(16.7%)に上昇している。マーケットアクセス改善のために、より多くの自由貿易協定が必要だと多くの人が考えているとともに、英国のEU離脱の意向がEUおよび英国向けの輸出にどのように影響を及ぼすかという点に関心が集まっているものと見られる。
【大塚 健太郎 平成28年8月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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