牛肉生産量世界第2位、消費量同第2位、輸出量同第3位のブラジル、そして、牛肉生産量・消費量・輸入量のいずれも世界最大の米国という世界的な牛肉需給の鍵を握っているこの二国間で、双方向で生鮮牛肉の輸出が可能となる状況が近々整う見込みとなった。
米国農務省(USDA)は8月1日、ブラジル政府との間で米国産生鮮牛肉のブラジルへの輸出再開について合意に至ったと発表した。これは、牛海綿状脳症(BSE)に関連し、米国が国際獣疫事務局(OIE)から「無視できるBSEリスクの国」と認定されたことに伴い、ブラジル側が自国の規制に反映させた結果である。米国産牛肉のブラジルへの輸出解禁(再開)については、仮に今年中に再開されれば、2003年以来の約13年ぶりとなる。今後については、両国で国内手続きが進められることとなるが、米国側に残っている主な手続きは、米国の牛肉輸出関連施設をブラジル政府に登録することとなる。
また、USDAは同時に、ブラジル産生鮮牛肉(加熱加工品は既に米国へ輸出可能)の米国への輸出解禁についても、二国間で合意に至った旨を公表し、これは、米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS:Food Safety and Inspection Service)がブラジルの食肉製品における食品安全システムが米国と同等のものであり、ブラジル産の生鮮牛肉(冷蔵および冷凍)を安全に輸入できると評価した結果である。本件については、1999年以降、米国とブラジルの両政府間で協議してきたものであり、仮に今年中に輸出が開始されれば、ブラジル側にとって約17年間もの交渉の結果が実ることになる。今後はFSISが輸出可能国リストなどを改正する手続きが残っており、現地の専門家の報告によると、この手続きにはまだ2〜3カ月程度が必要と考えられている。
ところで、諸外国が米国に対して畜産物の輸入解禁を求める場合、解禁に至るまでに、原則として2種類のハードルをクリアする必要がある。1つ目は家畜疾病(牛肉であれば主として口蹄疫(FMD:Foot and Mouth Disease))の侵入を防止するために家畜衛生の観点から米国農務省動植物衛生検査局(USDA/APHIS:Animal and Plant Health Inspection Service)が実施するリスク評価であり、2つ目は食品の安全性について食品衛生の観点からFSISが実施するリスク評価である。
既に2015年6月、米国は、ブラジルからの生鮮牛肉の輸入について、USDA/APHISによる家畜衛生の観点からのリスク評価を終了しており(海外情報2015年7月2日発)、今回は、FSISによる食品衛生の観点からのリスク評価が終了したものである。
米国に最も多く牛肉を輸出している豪州の反応について、報道情報によると、豪州の牛肉生産者団体関係者は、次のようにコメントしている。
− ブラジル産牛肉の米国への輸出が再開しても、関税割り当て枠は、米国が設定している「その他の国(other countries)」の6万4800トンにとどまり、この枠内には中米各国や最近市場アクセスを手にしたアイルランドなども含まれている。
− ただし、レアルが米ドルに対し安値で推移する中、枠外税率の24.6%が課されてでも米国へブラジル産牛肉を輸出することで、豪州産と競合する可能性もあることから、今後の動向に注視していきたい。