欧州委員会は8月19日、欧州連合(EU)が提訴していたロシアのEU産豚肉の禁輸措置について、世界貿易機関(WTO)のパネル(小委員会)が、ロシアの措置は、WTO協定の衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に違反するという判定を下したと発表した。また、ポーランド、リトアニア、エストニアの各国産豚肉に対して個別に措置されていたロシアの禁輸についても同様の判定が下りた。
欧州連合(EU)は2014年4月8日、EUからの豚肉輸入を全面的に禁止しているロシアに対し、不当な行為であるとしてWTOに提訴した。その後、WTOの紛争解決手続きに則って双方による協議が行われたものの解決には至らず、同年7月22日にパネルが設置され、審議が行われていたところである。
欧州委員会は、このWTOの判定については、ロシアおよび全てのWTO加盟国に対して、国際基準を遵守し、地域主義の原則と科学的な根拠に基づくリスク評価を実行する必要性を促すことになったとその意義を強調した。
また、この判定により、ロシアのEUに対するこの措置が科学的根拠に基づくものではないことが証明されたとし、世界で最も効果的なシステムの1つであるEUの動物衛生と食品安全システムの下で、EUの農産物は安全であり、世界中のいかなる国も輸入制限をする必要がないことを主張した。
なお、WTOパネルの紛争解決ルールでは、パネルの判定に不服がある場合、60日以内であれば上級委員会に上訴できることになっており、上訴があった場合、上級委員会は上訴内容を審議し、2〜3カ月以内に決定を下す。また、上訴が棄却されたとしても、上訴した国は、決定内容の履行のために妥当な期間が与えられる。
ロシアは上訴するものと見られていることから、欧州最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA)は、このWTOの決定を歓迎したものの
2018年までは禁輸は解かれないであろうとの見込みを示した。
参考:
欧州連合、ロシアをWTOに提訴(EU)(平成26年4月11日)