医薬・農薬大手のバイエル社(ドイツ)は9月14 日、遺伝子組換え種子の最大手であるモンサント社(米国)を1株当たり128 米ドル(1万3312円:1米ドル=104 円)、総額約660 億ドル(6兆8640 億円)で買収することに合意したと発表した。この数カ月間の交渉過程でバイエル社が買収金額を引き上げるなど条件を見直してきたが、1株当たりの買収額は、買収を提案する直前の5月9日の株価を44%上回るものとなった。
今後、各国・地域の独占禁止法監督機関の承認などが順調に進めば、買収は2017 年末までに完了すると見込まれているものの、承認が得られない場合は破談になる可能性もある。
種子や農薬、肥料など農業化学業界では、人口増加による食糧需要の拡大が続く中、昨年以降業界再編が加速しており、今回、バイエル社に買収されることとなったモンサント社も2015 年に農薬首位のシンジェンタ社(スイス)の買収に動いたが、同社の反対により断念した経緯がある(表)。
こうした一連の業界再編の動きは、種子や農薬、肥料等を多く輸入するブラジル市場でも注目が集まっている。最大の農業生産州であるマットグロッソ州農業連盟(FAMATO)のルイ・プラード会長は、「市場の寡占化が高まる事で、生産者の調達コストが上昇し、ひいては消費者も影響を被るなどさまざまな不利益が発生すると分析しており、今回の大手2社の統合は懸念せざるを得ない」と述べている。
一方、同州の大豆・トウモロコシ生産者協会(APROSOJA)のエンドリゴ・ダルシン会長は、「世界規模の巨大企業が影響力を強めることで農業資材市場の寡占化が一層進展し、市場競争が弱くなる事は憂慮すべきことであるが、今回のような統合は新技術の開発など期待できる部分もある」としている。