VIC州の酪農家、平均で4万豪ドルの赤字(豪州)
豪州の酪農団体デーリー・オーストラリア(DA)は9月、ビクトリア(VIC)州の酪農家の経営動向についての調査報告書を公表した。
この調査は、VIC州政府の経済開発・雇用・運輸・資源省とDAが共同で、同州の3地域(北部、南西部、ギプスランド地域(位置関係は図参照))の各25人の酪農家を対象に、経営動向や今後の生産見通しなどについて聞き取りを行ったもので、今年で10回目となる。
VIC州は、豪州の生乳生産全体の6割以上(約600万キロリットル)を生産する酪農の中心地で、多くの生乳が輸出用乳製品に仕向けられている。
同報告書によると、2015/16年度(7月〜翌6月)の金利税引前利益(注1)は、平均で乳固形分1キログラム当たり0.18豪ドル(14円:1豪ドル=80円、前年度比85.6%減)と大幅に減少し、調査開始以来3番目に悪い数値となった。また、当期純利益は、前年度の同0.65豪ドル(52円)の黒字から大幅に減少し、同0.41豪ドル(33円)の赤字となった(表)。平均的な経営規模(注2)の酪農家1件当たりで計算すると、約4万1000豪ドル(328万円)の赤字となる。
純利益がマイナスとなった要因について、同報告書では、以下の2点を挙げている。
- エルニーニョ現象による高温少雨気候の影響で、牧草生育環境が悪化し、多くの農家が1.5倍近くに値上がりした乾草の購入を余儀なくされたことや、かんがい導入地域でかんがい用水使用料が2倍近くに値上がりしたことを受け、売上原価が増加したこと。
- 生産者支払乳価が、平均で前年度と比べて1割近く引き下げられたことで、生乳販売収入が減少したこと。
2016/17年度の収益見通しについて、「悪化する」と回答した酪農家の割合は、前年度の3割強から大幅に増加し、約4分の3に達した。また、今後の経営課題としては、乳価の動向を挙げる声が大幅に増加しており、次いで資産の管理、事業継承といった課題を挙げていた。
注1:Earnings Before Interest and Taxesの略称。本調査では、売上高から売上原価と間接諸経費を差し引いて求めた、利払い前の税引き前当期利益のこと。
2:本調査では、飼養頭数を345頭、1頭当たり乳固形分を511キログラム、平均乳価を乳固形分1キログラム当たり5.40豪ドル(43円)として計算している。
【竹谷 亮佑 平成28年10月5日発】
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