畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2016年 > 豚肉の短期的需給見通しを公表(EU)

豚肉の短期的需給見通しを公表(EU)

印刷ページ
 欧州委員会は2016年10月6日、農産物の短期的需給見通しを公表した。このうち2016年の豚肉需給見通しの概要を紹介する。

豚肉生産量は1.0%増の見通し

 2016年第2四半期の豚肉生産量は、前年同期比3.2%増と第1四半期の同0.7%増から大きく伸びた。デンマーク、オーストリア、ベルギーでは引き続き減少し、ドイツは減少の速度を弱めたが、その他の加盟国ではほぼ増産となった。
 
 一方、2016年5・6月の豚飼養頭数調査によると、主要生産国の母豚頭数は42万頭減少した。最も減少したポーランドが15.0万頭減、次いでドイツが10.7万頭減、オランダが5.3万頭減、スペインが3.4万頭減、フランスが2.9万頭減となり、これまで増加してきたスペインも減少となった。
 
 2016年第2四半期における生産量の増加は、と畜頭数の増加によるものであり、母豚頭数の減少により子豚頭数が減っていることから、今年下半期の生産量の増加率は抑えられてくると予想される。
 この結果、2016年の豚肉生産量は、輸出需要の増加と価格の上昇から、前回(7月)の見通し(0.2%増)から上方修正され、前年比1.0%増の2360万トンと予測される。
 
 なお、2016年上半期のオランダ、フランス、ポーランドの豚肉生産量は、母豚頭数が大きく減少しているにもかかわらず増加しているが、これは、子豚と肥育豚の輸入を増やしているためである。
 近年、子豚と肥育豚の輸入は各国の豚肉生産において重要な要素となっており、多い国では輸入肥育豚がと畜頭数の1割を超える場合もある。しかしながら、2016年上半期においては域内の肥育豚の移動は前年同期から14%減少した。特に、オランダとドイツは、移出が大きく減少しており、国内で肥育・と畜を行う傾向が見られる。ただし、デンマークとその周辺国においては、この動きは見られていない。
 

豚肉輸出量は前年比24%増の予測

 2016年の豚肉輸出量は、中国向けが大きく伸びていることを受け、前回の見通し(18%増)から上方修正され、前年比24%増の270万トンと記録的なレベルになると見込まれている。
 特に中国向けは、同国の豚肉生産量の減少が背景にあり、4〜6月は、それぞれ単月で10万トンを超え、2016年1〜7月のEU産豚肉の中国向け輸出は対前年同期比44%増となった。加盟国別のシェアは、ドイツ、スペイン、デンマークがそれぞれ27%、26%、14%となっている。今後の中国向け輸出は、同国の景気減退、EUの豚肉輸出余力、元に対するユーロ高の為替レートにより、減少すると見込まれている。なお、ポーランドは、アフリカ豚コレラ(AFS)の影響で中国向けの禁輸が続いている。
  中国の豚肉輸入量は、2016年上半期の時点で、2015年の年間輸入量を上回り、7月までの累計で95万トンに達した。そのうち69%をEU産が占め、その他は米国の14%とカナダの11%となっている。

 中国向け以外でも、2016年上半期の輸出は、日本向けが16%増、台湾向けが15%増、ウクライナ向けが9%増、米国向けが40%増など大きく伸びている。フィリピン向けは、同国との貿易紛争が解決した結果33%増となった。
 また、この短期的需給見通しにおいては、ロシアの禁輸は継続すると想定している。WTOは8月19日にロシアの禁輸をWTOルール違反としたが、ロシア政府は9月23日に上訴した。この裁定は、3カ月以内になされるが、ロシアの禁輸措置は2017年まで継続されるものとみている。
 
EU産豚肉の中国向け輸出量の推移

豚肉価格は急上昇

 EU平均豚肉卸売価格は、2016年の年初から低迷していたが、4月末から急上昇し、7月初旬には100キログラム当たり160ユーロ(1万8560円:1ユーロ=116円)を超えた。この価格上昇は、例年の季節的変動によるものに加え、中国向け輸出の急増とEU域内における供給の減少も影響したと考えられる。
 
 EU平均子豚価格は、2016年の年初から上昇し、2月に1頭当たり40ユーロ(4640円)を超し、6月に再び値を上げ、8月は同43ユーロ(4988円)前後で推移しており、前年同期比で30%程度上回っている。
 大豆を中心とした飼料価格が再び下降して飼料コストが下がったため、養豚生産者の収益は改善された。また、穀物も豊作により飼料に多く仕向けられると見込まれる。
 
EU平均豚肉卸売価格の推移
 EUの2015年の一人当たり豚肉消費量は、前年より1キログラム近く増え、32.4キログラムに達した。2016年は、中国向けの輸出拡大により一時的にEU内の供給量が減るため、過去10年並みの水準となる1.6%減の32キログラムになり、2017年も横ばいで推移すると見込まれている。
 
【調査情報部 平成28年10月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527