タイ政府、キャッサバ価格引き上げのための支援策を発表
最終更新日:2016年11月4日
現地報道(バンコク・ポスト)によると、タイ政府は、キャッサバの取引価格引き上げのための支援策を発表した。
タピオカ製品輸出価格に最低価格を設定
タイ政府は、2016年11月から2017年4月まで、タピオカ製品の輸出(FOB)価格について、タピオカでん粉1トン当たり320米ドル(3万3920円:1米ドル=106円)、タピオカチップ同180米ドル(1万9080円)という最低価格を設定することを決定した。2016年8月現在、タピオカでん粉の輸出価格は、同330米ドル(3万4980円)とわずかながら最低価格を上回っているものの、タピオカチップの輸出価格は、同167米ドル(1万7702円)と同価格を下回っている(図1、図2)。
タイ政府としては、本措置が、輸出価格のさらなる下落を防ぎ、キャッサバの取引価格の上昇につながると見込んでいる。2016年9月現在、キャッサバの取引価格は、1キログラム当たり1.13バーツ(3.5円:1バーツ=3.07円)となっており、生産者の損益分岐点とされる同1.9バーツ(5.8円)を下回っている(図3)。
さらに、輸出業者は、最低限の在庫保持を求められる。輸出業者は、タピオカ製品輸出時、輸出量の1.5倍の在庫を常に保持することが必須となるというものである。また、生産者に対しては、収穫を遅らせることに対するインセンティブを今後付与する予定としている。
エタノール製造企業にも最低価格措置を要請
タイ政府は、エタノール製造企業に対しても、キャッサバの買取価格について、水分含有率25%を基準として、1キログラム当たり1.9バーツ(5.8円)という最低価格を設けるよう求めている。最近の同基準のキャッサバの取引価格は、同1.4〜1.7バーツ(4.3〜5.2円)と、前年同時期の2.3バーツ(7.1円)前後に比べ大幅に下落している上、最低価格も下回っている。
輸入小麦との競合を考慮した対策も
さらに、タイ政府は、主に飼料原料としてタピオカチップと競合する輸入小麦についても、新たな対策の実施を発表した。これは、輸入業者へ、用途、在庫状況、入荷数量などの政府当局への報告を義務付けるものであり、小麦の輸入が厳しく監督されることになる。こうした対策は、2013年以降、タイでは、飼料業界からの要求に応じ、関税が撤廃された輸入小麦の流入により、トウモロコシやキャッサバ生産者の不満が高まっていたことが背景にある。
【根本 悠 平成28年11月4日発】
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