牛肉の短期的需給見通しを公表(EU)
欧州委員会は2016年10月6日、農産物の短期的需給見通しを公表した。このうち、2016年の牛肉需給見通しの概要を紹介する。
生産量は2.6%増の見通し
2016年上半期の牛肉生産量(枝肉換算ベース)は、前年同期比3.2%増であった。西欧諸国では同2%増となった一方、東欧諸国では同12%増とかなり大きな伸びとなっており、中でもポーランドにおける乳用牛の淘汰が大きく影響している。西欧諸国の伸びも、乳用牛のと畜頭数の増加によるものであり、雄牛のと畜頭数に大きな変化は見られない。
生産者乳価が低迷する中、乳用牛の淘汰がEU全体で進められており、下半期においても継続されると見込まれる。EUの生乳出荷削減奨励事業に加え、フランス独自の対策も乳用牛の淘汰に拍車を掛けることとなり、それらが牛肉市場に供給されることになる。
こうしたことから、2016年の牛肉生産量は、前年比2.6%増の792万トンと予測され、2017年も同レベルで維持されると予測されている。
輸出は10%増、輸入は3%増
2016年1〜7月の牛肉輸出量(製品重量ベース)は、前年同期比17%増となり、第1四半期の10%増からさらに伸びている。国際価格が供給減と需要増から比較的高めに推移しているため、EU産牛肉に競争力が生じている。
EU産牛肉は、イスラエル向け(前年同期比400%増)、コートジボワール向け(同175%増)、ベトナム向け(同300%増)など2国間の貿易協定により新たな輸出先が開拓されており、今後もさらなる市場開拓が期待されることから、2016年の輸出量は前年比10%増と予測されている。
一方、2016年1〜7月の牛肉輸入量は、前年同期比2%増となった。国内需要の停滞から輸出向けが潤沢で、かつ価格競争力を有するブラジル産が最も大きく伸びた。
米国産は、日本などアジア向けが増えたことや為替の影響から減少し、豪州産は、輸出量全体は減っているものの、EUの輸入量は同8%増となった。また、アルゼンチン産は、2016年上半期では4%増となっており、EU市場は多くの牛肉輸出国にとって魅力的な市場になっていると思われる。
2016年の牛肉輸入量は前年比3%増と予測され、2017年も同じく3%増と見込まれている。
酪農部門からの供給増により価格が下落
経産牛価格は、例年は夏にピークを迎える。しかしながら、2016年は、年初から低迷し、前年を12%、5年平均を5%下回っており、夏の上昇は見られなかった。
酪農部門の廃用牛のと畜頭数の増加により経産牛枝肉価格が低迷しているため、その他の牛枝肉価格も影響を受け前年比4〜6%安となった。
しかしながら、豪州産牛肉の輸出が減少した一方、景気が減速した中国以外のアジアを中心に国際需要が高まったことを受けて、7月には雄牛価格の上昇が見られた。
EUの生体牛輸出は伸長
2016年1〜7月の生体牛輸出は、地中海周辺諸国の強い需要により、前年同期比34%増となった。3大輸出先は、トルコ(18万6000頭)、イスラエル(9万5000頭)、レバノン(9万頭)となり、この3カ国で全体の65%を占める。昨年最大の輸出先であったハンガリー向けは、5万2000頭となった。最近ではスロバキア向けも伸びており、7月単月で1万4000頭を輸出した。
最大の市場であるトルコ向けは、国内の牛肉価格が旺盛な需要と牛肉生産の停滞により比較的高位で推移しており、2016年の生体牛輸出は30%増、2017年もこのレベルで続くと見込まれ、2013年〜2014年の平均の2倍近くの輸出頭数が見込まれている。
【調査情報部 平成28年11月4日発】
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