牛肉産業の課題に関する報告書を発表(豪州) 豪州食肉加工業者協議会
(注1)(Australia Meat Packer Council、以下「AMPC」という)は10月、牛肉産業が直面している課題についてまとめた報告書を発表した。
同報告書は、牛肉産業は現在、以下の6点の課題を抱えており、こうした課題に対して積極的に対応すべきであるとしている。
- 国際競争の激化:輸出市場で競合するブラジルや米国、インドなどの国々に比べて、人件費が高いため、コスト面での不利が見込まれる。
- 複雑な規制:業界の意向を踏まえずに導入される、連邦政府や州、郡などのさまざまな規制が、産業のバリューチェーンを効率化する上で足かせとなっている。
- 消費者の志向の変化:国内牛肉小売価格の上昇による鶏肉や豚肉需要への移行に加え、食の安全志向や、簡便調理志向が強まっている。
- インテグレーションの遅れ:豚肉や鶏肉産業に比べて、産業の垂直統合が遅れている。これは、単に資本効率だけでなく、効率的なマーケティングや情報蓄積という点でも非効率である。
- 社会からの支持:環境保護やアニマルウェルフェアの遵守などに対する、地域社会からの要請に対応していく必要がある。
- 気候変動への対応:業界に大きな影響をもたらす過酷な自然災害の度重なる発生や、気候の変化への対応が求められている。
また、豪州自由競争・消費者委員会
(注2)(Australian Competition & Consumer Commission、以下「ACCC」という)は10月末日、肉牛市場と牛肉加工における競争についての中間報告書を発表した。
ACCCは、買い手である食肉業者・小売業者の寡占化が、肉牛生産農家に比べて進んでいること、肉牛取引価格が不透明であること、牛肉産業の高コスト構造により国際競争力が阻害されていることを問題視しており、同報告書で、買い手(市場買参人)の登録制度の創設や、より明確な格付制度の確立など、14の提言を行っている。
現地報道によると、ACCCは、家畜取引におけるカルテルなどの反競争的行為について、今後調査を開始するとしている。AMPCは、最終報告書の発表を前に、ACCCの提言を前向きに受け入れ、業界の変革に積極的に取り組んでいきたいとしている。
- (注1)課徴金を原資として、食肉加工分野の研究・開発や情報収集・提供を実施する民間団体。なお、ロビー活動などを行うAustralian Meat Industry Councilは、上部団体に当たる。
- (注2)日本の公正取引委員会に当たる組織。