Thanksgiving Day(感謝祭)の食卓の主役である七面鳥肉をめぐる情勢(米国)
毎年11月の第4木曜日(2016年は11月24日)は米国の祝日の一つであるThanksgiving Day(感謝祭)であり、七面鳥の肉を食することからTurkey Day(七面鳥の日)とも呼ばれている。この感謝祭に家族で集まって食する代表的な料理が七面鳥の丸焼きであり、この時期のスーパーマーケットなどの小売店では、七面鳥の丸鳥が目立った場所で販売される。今日、日本ではなかなか食する機会が少なく、なじみの薄い七面鳥肉の近年の需給について、以下にとりまとめる。
感謝祭は、1日で年間生産量の2割弱が消費されるとも言われているほど七面鳥が年間で最も消費される日であるが、七面鳥は、クリスマスや復活祭でも多く消費されるほか、サンドイッチの具材やソーセージなどの加工品の原材料として普段から食され、なじみ深い食材である。
家きん肉の生産量の長期的な推移を見てみると、図1の通り、鶏肉が近年まで継続的に増加している一方で、七面鳥肉は1990年ごろに天井に達しており、祭事を中心とした安定的な需要はあるものの、この約20年間マーケットが拡大していないことがわかる。
ちなみに、七面鳥飼養農家は図2の通り、全米に広く分布しているものの、上位5州で全体の5割以上を生産している。
七面鳥肉の需給に関する統計を見ると、下表の通り、近年では年間250万トン強が生産されており、このうちの約9割が自国で消費され、残りの1割程度が輸出されている。主な輸出先は隣国メキシコであり、輸出量全体の半数以上が同国に輸出されている。
また、2015年は、前年12月から5月まで米国内で鳥インフルエンザが多発し、700万羽以上の七面鳥が殺処分され、年間生産量が少なかったことから、感謝祭前後でピークを迎えた10月の卸売価格は、過去2年と比べてかなり高い価格で推移した。2016年の生産量は8月までの段階で前年同期比8%増と回復しており、10月の卸売価格は前年同月と比較して約1割安いものの、過去3年平均を上回って推移しており、年間を通じた平均卸売価格も昨年を上回ると米国農務省(USDA)は見通している(図3)。
一方、USDAは、1年で最も七面鳥が調理され食される日を前に、「感謝祭の食の安全における5つの助言」と題し、七面鳥とその料理の取り扱いについて言及したプレスリリースを11月21日に公表した。主な内容は以下の通りである。
七面鳥の肉は、(食中毒の原因となり得る)サルモネラ菌やカンピロバクターを保有している可能性があるが、これらは適切に調理することで死滅する。また、残った料理についても、適切に処理しないと別の食品由来疾病を招くおそれがある。消費者に適切に七面鳥を取り扱ってもらい、休日の食事を楽しんでもらうため、感謝祭の食の安全における5つの助言を示す。
(1)七面鳥肉を洗わない
→ USDAの調査によると68%もの人が調理前に七面鳥肉を水洗いしているとのことだが、洗うことで逆に周囲3フィート(約91.4cm)に病原体をまき散らしてしまうおそれがある。調理で適切な温度まで加熱すれば病原微生物は死滅するので、洗う必要はない。
(2)冷蔵庫、冷水、電子レンジで解凍する
→ 七面鳥の丸と体はよく冷凍で売られているが、安全な解凍方法は3種類ある。 冷蔵庫での解凍が一番安全であり、5ポンドの重さにつき24時間かけること。残る2つは冷水による解凍と電子レンジによる解凍であるが、冷水なら30分ごとに水を交換すること。電子レンジは説明書に従うこと。
(3)食品温度計を使おう
→ 調理する際に肉の内部まで火が通ったかを知る唯一の方法は食品温度計を使って肉の内部の温度を測ることである。七面鳥の丸どりを調理する際には、モモ肉、手羽、ムネ肉の最厚部の3カ所の温度を測り、華氏165度(摂氏73.8度)に達していることを確認すること。
(4)外が寒くても、食品を屋外で保存しない
→ 屋外で食品を保存してはいけない理由は2つある。1つ目は、野生動物などが食べるほか、汚染する可能性があること。2つ目は、温度の変化で摂氏4度以上の危険な温度帯に上昇する可能性があること。
(5)残り物を冷蔵庫で保存するのは4日間まで
→ 食べ残しは、オーブンから出して2時間以内の早い段階で、骨を外し冷蔵すること。冷蔵で保つのは4日間であり、すぐに食べないのであれば、冷凍保存し4カ月以内に食すること。
【調査情報部 平成28年12月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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