第21回世界食肉会議がウルグアイで開催
国際食肉事務局(IMS)が主催する第21回目となる世界食肉会議(World Meat Congress(参考))は11月8〜9日、ウルグアイのマルドナド県プンタ・デル・エステで開催された。
主催者発表で36カ国から700人以上の食肉関係者が一同に集う中、米国農務省(USDA)や欧州委員会など政府機関、FAO、OIEといった国際機関や主要団体の専門家が、最近の食肉業界をめぐる情勢について議論した。
開会に際して、ホスト国であるウルグアイのTabare Aguerre農牧水産大臣は、国際市場で存在感を増す同国の牛肉生産は、牧草主体で環境に配慮した持続可能な体系で行われていると紹介した。同大臣は、牛肉を含む食肉生産は、地球温暖化の議論の中で問題視される傾向にあるが、同国においては牛飼養地におけるユーカリ等の植林や改良草地の拡大を通じて、温室効果ガス(GHG)の排出抑制に向けて取り組んでいると報告し、業界全体で今以上に連携を深めながら持続可能な成長を推進する必要があると言及した。
Tabare Aguerre農牧水産大臣
本会議においては、食肉の需給に関する最新事情とその分析が報告され、牛肉は他の食肉と比べ増産スピードが緩い一方、中国などアジア諸国からの需要が旺盛なため、価格の上昇幅が最も大きいことなどが報告された。これに対し、ラボバンクのJustin Sherrard氏は、「牛肉価格は堅調であるが、価格競争を行うだけでは疲弊してしまうので、付加価値化のアプローチが重要になっている。消費者の嗜好には、信頼性が大きく寄与しており、トレーサビリティの確立は最も有効な手段である」と述べた。
また、貿易政策についての議論の中では、直近15年間は、グローバリゼーションと自由化の流れが顕著であったが、今後15年はローカリズムが台頭する気配を感じているとの報告があった。この背景として、世界金融危機のような連鎖経験に加え、英国のEU離脱(Brexit)のような動きもみられたことを挙げている。遅々として進まないTPPのような多国間交渉よりも、二国間およびブロック交渉へ回帰すべきとの声も聞かれた。
2日間にわたった本会議では、「Sustainable(持続可能な)」が度々用いられ、持続可能な牛肉生産体系の構築が重要課題に位置づけられた。昨今の消費者の視線がアニマルウェルフェアや環境保護など価格以外の要素にも向けられていることを受けて、業界として消費者ニーズの傾向と変化を有益なシグナルとして捉え、サプライチェーン全体に訴求させる必要があると結論づけた。
(参考)
第1回世界食肉会議は、IMSの前身のOPICが主催して1974年5月9〜11日にマドリードで開催された。創設メンバーは、欧米およびアルゼンチン、ウルグアイの業界団体である。その後、1988年にパリで開かれた会合でIMSに改名され、加盟資格も民間企業から政府関係機関まで拡大された。
世界食肉会議は、2年に一度開催されており、次回は米国(テキサス州ダラス)において、2018年5月30日〜6月1日に開催される予定となっている。
【米元 健太 平成28年12月7日発】
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