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米国農務省、農畜産物の長期需給見通しを公表(米国)

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 米国農務省(USDA)は2016年11月29日、米国のトウモロコシ、大豆、畜産物などの長期需給見通しを公表した。なお、USDAは、毎年2月に農畜産物などの長期需給見通しに関する報告書を公表しており、例年、その一部を早期に公表している。

トウモロコシ

 2017/18年度(9月〜翌8月)のトウモロコシの作付面積は、9000万エーカー(3600万ヘクタール)と前年度比4.8%の減少となり、その後も減少傾向で推移すると見込まれている。
一方、2017/18年度の単収は、同2.6%減の1エーカー当たり170.8ブッシェル(1ヘクタール当たり10.8トン)となるものの、その後は増加傾向で推移し、2026/27年度は同188.8ブッシェル(同12.0トン)と見込まれている(表1)。
 この結果、2017/18年度のトウモロコシ生産量は、前年度比7.7%減の140億6000万ブッシェル(3億5712万トン)と見込まれている。また、その後は、単収が増加傾向で推移するものの、作付面積が減少するとの予測から、2026/27年度の生産量は、2016/17年度比2.9%減の147億8400万ブッシェル(3億7551万トン)と見込まれている。
 トウモロコシの生産者販売価格は、生産量の減少見込みにより、上昇するとみられ、2026/27年度には1ブッシェル当たり3.7米ドル(1キログラム当たり16.5円:1米ドル=113円)と予想されている。しかし、トランプ次期大統領は、気候変動への対応に懐疑的であるとされており、今後バイオエタノール政策に大幅な変更が加えられれば、国内消費量の約4割を占めるエタノール向けが減少することとなり、価格水準の下げ圧力が増すものと考えられる。
表1 トウモロコシ

大豆

 2017/18年度の大豆の作付面積は、前年度比2.2%増の8550万エーカー(3420万ヘクタール)となり、その後は横ばいで推移すると見込まれている。また、単収は、過去最高見込みの前年度を8.8%下回る1エーカー当たり47.9ブッシェル(1ヘクタール当たり3.3トン)と見込まれている(表2)。
 この結果、2017/18年度の大豆生産量は、同7.1%減の40億5000万ブッシェル(1億1016万トン)と見込まれている。また、2026/27年度の生産量は、2016/17年度比1.0%増と見込まれている。USDAは、大豆の単収について、特に2017/18年度に前年度比8.8%減とかなりの減少となり、その後の回復も小幅であると見込んでいるが、これが、近年米国内で高まりつつある反GMOの動きを考慮したためであるかどうかは不明である。
 生産者平均販売価格は、消費量の増加に伴い、上昇傾向で推移し、2026/27年度には1ブッシェル当たり9.55米ドルとなる見込みである。
表2 大豆

牛肉

 牛飼養頭数は、増加傾向で推移し、2026年には9545万頭(2016年比3.8%増)となる見込みである(表3)。ただし、牛飼養頭数には、およそ8〜12年で増減傾向が切り替わるいわゆるキャトルサイクルがあり、この影響についても考慮したい。
 牛肉生産量は、飼養頭数の増加に伴い増加傾向で推移し、2026年には1261万3000トン(同10.7%増)と見込まれているが、現在、牛肉価格が下落傾向にあり、頭数の減少要因になり得ることから、見通し通りの増加率で推移するかに注目したい。
表3 牛肉

豚肉

 豚飼養頭数は、概ね増加傾向で推移し、2026年には7404万3000頭(2016年比7.4%増)と見込まれている(表4)。また、豚肉生産量は、飼養頭数の増加に伴い増加傾向で推移し、2026年には1290万9000トン(同14.0%増)と見込まれている。しかしながら、現在、養豚農家の収益性は、豚肉価格の下落により低水準で推移しており、今後の豚肉生産への影響が懸念される。
 輸出量は、増産に後押しされ、2026年には292万9000トン(同24.7%増)と大幅に増加する見込みである。
表4 豚肉

鶏肉

 鶏肉生産量は、増加傾向で推移し、2026年には2010万2000トン(2016年比10.0%増)となる見込みである(表5)。
 国内消費量および輸出量は、概ね増加傾向で推移し、2026年にはそれぞれ1650万7000トン(同7.6%増)、365万9000トン(21.0%増)となる見込みである。
 なお、2026年の生産量は、豚肉同様2016年比で10%の増加を見込んでおり、トウモロコシに対する飼料用需要の高まりを裏付けるものとなっている。
表5 鶏肉

乳製品

 乳牛の飼養頭数は、増加傾向で推移するものの、2023年の9450万頭をピークに減少傾向に転じ、2026年には9415万頭(2016年比0.9%増)となる見込みである(表6)。また、1頭当たり乳量は増加傾向で推移し、2026年には1万2276キログラム(同20.9%増)となる見込みである。しかし、消費者の反応に対応し、全米でrBSTの使用が減少しているとされる中にあって、1頭当たり乳量が年平均2%程度増加するものか、今後の推移が注目される。
 生乳生産量は、飼養頭数および1頭当たり乳量の増加により、2026年には1億1734万4000トン(同22.3%増)となる見込みである。
 2026年の輸出量は、2016年比46.0%増の576万1000トンと大幅な増加が見込まれている。
表6 乳製品
【渡邊 陽介 平成28年12月20日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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