「ソーダ税」が各地に広がりを見せ、合計7つの自治体で導入へ(米国)
最終更新日:2016年12月21日
2016年11月8日、次期大統領を選出する選挙が実施されたが、通常、同日には、連邦上・下院議員選挙、州政府、地方自治体の選挙や規制導入の是非などを問う住民投票も各地で実施される。
こうした中、今回、砂糖の需給に関連するものとしては、最近、世界各地で導入が検討されている、ソーダ税導入の是非を問う住民投票が実施され、後述するコロラド州ボルダ―市など4つの自治体で新たな導入が決定された。さらに、その数日後にも別の1自治体でも導入が決まり、米国において同税を導入する自治体は、実施済みも含め全部で7カ所となった。
米国における炭酸飲料の1人当たり消費量は、民間調査会社によると、ここ15年間減り続けており、1998年の約53ガロン(約200リットル)をピークに、2014年には約41ガロン(約155リットル)にまで減少している。さらに、同国における「食料・飲料向け甘味料消費量」の推移を見てみると、時をほぼ同じくして1999年を境に減少しており、これらは「2000年代初頭の肥満への危機意識が高まった結果である」と同調査会社の調査員は語っている(図)。
このような状況の中、世界保健機関(WHO)は2015年、「成人および児童の糖類摂取量」の新ガイドラインを発表し、1日当たりの糖類(注)摂取量について、総エネルギー摂取量の5%(成人で1日25グラムとされる)未満にすることを条件付きで推奨するなど厳格化した。さらに、WHOが本年10月に公表した糖類に関する税の導入を各国に促す旨の報告書によると、砂糖を含む飲料に対して課税をすることで価格が20%以上上昇すれば、同率程度の消費の抑制が期待できるとのことである。WHOの担当者は、「政府がこのようなソーダ税を課せば、消費量が抑えられる結果、肥満、糖尿病、虫歯の患者数を抑制できるだけでなく、新たな歳入が生じることで健康増進政策も推し進めることができる。」と話している。
(注)食品や飲料の製造過程で添加された砂糖、異性化糖の他、ハチミツや果汁などに含まれる果糖やブドウ糖も含まれると定義されている。
このように国際機関も導入を促しているソーダ税については、米国ではカリフォルニア州バークレー市で2014年に同国初めての導入が決定し、2015年1月から既に課税を実施している。その後も本年6月にはペンシルベニア州フィラデルフィア市で導入が決定し、先述したように本年11月には5つの自治体が導入を決定・開始することとなった(表)。課税対象の範囲や税率こそ微妙に異なる部分はあるが、概ね加糖飲料1オンス当たり1セントから2セントの税金を課す仕組みである。既に導入から1年以上が経過しているバークレー市の事例では、初年度に120万ドルの税収があり、この税収をさらに炭酸飲料の消費を減らす取り組みに使用することが市議会で決まったとのことである。
ソーダ税の導入については、過去にも同国各地で数多くの提案があったものの、これまでは反対する飲料メーカーや団体が多額の資金を投入して阻止してきた。近年では、ソーダ税の推進派を資金力のある活動家がバックアップすることもあり、潮目が変わりつつあると感じられる。米国飲料業界の担当者は、「このようなソーダ税導入の動きが直ちに全米に広がるとは考えにくい」と強気のコメントを発しているが、他の自治体でも引き続き同様の条例案が提案されており、この「ソーダ税」が同国でどのような動きを見せるのか、導入された地域でどのような影響が生じるかについては、引き続き注目に値する。
【平成28年12月20日発 調査情報部】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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