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USDEC、2017年の米国の乳製品輸出を左右する5大要因を発表(米国)

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 米国乳製品輸出協議会(USDEC)は2017年1月4日、「2017年の米国産乳製品輸出を占う5大要因」と題して、今後の米国の乳製品輸出に影響を与える要因について、ホームページで公表した。
 この5つの要因についてUSDECは、(1)EUのスプリングフラッシュ(注1)、(2)需要に対する向かい風、(3)乳製品在庫、(4)米国の通商政策、(5)中国の乳製品輸入の品目別構成比を挙げている。USDECによるそれぞれの概要については以下のとおり。
(注1)寒冷地における春先の牧草の急速な成長とこれに伴う生乳生産の急増を指す。

 (1)EUのスプリングフラッシュ
 EUの生乳生産量は、2016年6〜9月に前年同期比1.8%の減少となり、第4四半期(10〜12月)も生乳出荷量を削減した農家に対して支払いを行う生乳出荷削減奨励事業により、引き続き減産となる可能性が高い。 一方、2017年については、生乳生産者価格が7〜10月にかけて10%上昇し、バター、粉乳、チーズの価格も、春先から22〜68%上昇したことから、不透明である。特に、過去2カ年に大幅な増産を行ってきたデンマーク、アイルランド、オランダなどにおいて、現在の価格上昇が2017年の酪農家の増産意欲を高めるのに十分な水準であるかどうかが不明である。

(2)需要に対する向かい風
 国際原料乳製品価格が上昇しており、上昇分は小売価格に転嫁されることになることから、2017年の世界の乳製品需要にとって多少の向かい風になるだろう。 また、2016年の大統領選以降、米ドル指数(注2)は過去14年間で最高となり、新政権移行後にはさらに上昇するとみられ、輸入国の需要への影響が懸念される。  このほか、原油安が産油国における乳製品需要をさらに抑制する可能性がある。2年続いている原油安が中東諸国やベネズエラなどを疲弊させており、乳製品需要を低減させている。11月末に石油輸出国機構(OPEC)が原油の減産に合意したものの、OPECに加入していない国が減産するかは不透明で、国際的な原油の供給過剰分が削減されるかどうかも不明である。
 (注2)主要通貨に対する米ドルの総合的な価値を示す指標。

(3)乳製品在庫
 11月末時点のEUの民間在庫は、脱脂粉乳が7万トン、バターが7万5000トンあり、脱脂粉乳の介入在庫が35万5000トンある。また、9月末時点の米国のバターとチーズの在庫量は、それぞれ12万2000トン、56万2000トンと記録的水準である。2017年の焦点は、EUおよび米国などが乳製品在庫の取り崩しを進めることができるかどうかである。

(4)米国の通商政策
 新たな大統領の就任前は常に、新政権の通商政策がどうなるかに関心が集まり、トランプ次期大統領についても例外ではない。 EUは意欲的に自由貿易協定(FTA)交渉を行っている。アジア諸国は、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定と併存する、または代替となる地域協定の可能性について協議している。豪州およびニュージーランドは、既に中国との間でFTAを締結しており、ニュージーランドは同協定の乳製品に関する再協議を開始する計画を公表している。米国は、各国に取り残されることがないよう、自国を発展させる動きを活発化する必要がある。

(5)中国の乳製品輸入の品目別構成比
 2016年1〜10月の中国の牛乳・乳製品輸入量は、生乳換算で前年同期比15%増となった。このうち全粉乳は、同18%増となり、全体の30%を占めた。また、飲用乳、クリーム、チーズ、育児用調製粉乳は、前年同期を大幅に上回る記録的な増加となっており、これらを合計すると全体の16%を占める。これらの品目が乳製品輸入量に占める割合は、2012〜2014年には7%ほどであったことを考えると大きな変化であると言える。 乳製品輸入国として、中国の将来性を疑う者はほとんどいないが、輸入品目の構成には変化が表れている。
【渡邊 陽介 平成29年1月16日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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