MLA、2017年牛飼養頭数を上方修正(豪州)
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は1月23日、四半期に一度の牛肉需給見通しを発表した(表)。
2017年の生産・輸出見通し、牛飼養頭数の増加によりわずかに上方修正
MLAは、2017年(6月末時点)の牛飼養頭数は、ビクトリア州やニューサウスウェールズ州などの南部を中心に牛群の回復が進んでいることから、4年ぶりに増加し、268万1000頭(前年比2.6%増)と見込んでいる(図1)。北部では、2016年11、12月の高温で牛群の回復が遅れている上、今後も平年以上の気温と平年以下の降水が見込まれていることから、飼養頭数の回復は南部より遅れるものの、南部では、牛群再構築が進展しており、2018年には3,4年前の干ばつにより飼養頭数が大幅に減少する以前の水準まで回復することから、全体としては増加傾向で推移すると見込んでいる。
また、2017年の牛と畜頭数は、依然として前年を下回るものの、牛飼養頭数の回復に伴い2017年後半ころから回復し始めることで、前回予測時(2016年10月)からわずかに上方修正され710万頭(同2.7%減)と見込んでいる。これに伴い牛肉生産量もわずかに上方修正され、203万8000トン(同2.7%減)と見込んでいる。
2018年以降については、牛飼養頭数の増加に伴い、牛と畜頭数、牛肉生産量、輸出量などすべての項目で増加傾向で推移する見込みとしている。
牛肉輸出、韓国向けが好調
MLAは、本牛肉需給見通しの中で、輸出先国ごとの状況を次の通り分析している。
1 米国
米国向けは、同国における牛肉生産量の増加と同国向け輸出の大部分を占める加工向け牛肉価格の下落に加え、豪州における牛肉生産量の減少により、2016年は24万942トン(前年比42%減)と大幅に減少した(図2)。2017年と2018年についても、米国の牛飼養頭数は回復しており、繁殖雌牛のと畜頭数も増加すると見込まれることから、豪州産牛肉への需要は引き続き減少すると見られる。
2 日本
2016年は、2014年と2015年に最大の輸出先であった米国向けが減少したことから、日本は最大の輸出先となったものの、前年を7.6%下回る26万3458トンにとどまった。2017年も、日本は成熟した市場であり牛肉需要の増加が見込めないことに加え、米国産との競合によりシェアを奪われていることから、わずかに減少すると見られる。
3 韓国
韓国は、同国内の牛肉生産量の減少と牛肉価格の上昇により、輸入牛肉に対する需要が増加しており、2016年は、主要な輸出先の中で唯一輸出量が増加した。しかし、2017年は、韓米FTAに基づく牛肉の関税率(24%)が、韓豪FTAに基づく関税率(29.3%)よりも低いことから、米国産にシェアを奪われることも懸念される。また、2016年は堅調な需要により韓豪FTAに基づくセーフガードの発動数量を超過しており、2017年も、増加する需要をセーフガードの発動数量により抑制されることが懸念される。
4 中国
2016年は、ブラジルとの競合により大幅に減少した。今後もブラジルやウルグアイなど南米諸国との競合に加え、中国国内での牛肉生産も徐々に増加していくことが予想され、競争の激しい市場になると見られる。
5 東南アジア
東南アジアは、一つの市場としてみると、もっとも成長している市場である。
このうち、大部分を占めるインドネシアは、同国政府による輸入枠に大きく影響を受ける。2016年は、国内の牛肉価格の引き下げを目的とした輸入枠の拡大により大幅に増加したものの、今後の先行きは不透明である。また、増加しているインドからの水牛肉の輸入が牛肉消費へどの程度影響を与えるのかが問題となってくる。
その他の国については、所得の増加に伴い牛肉消費が増加していくと予想される一方、インドやブラジルとの競合も予想される。
【大塚 健太郎 平成29年1月26日発】
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