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肉牛生産者にとっての2017年の重点課題〜NCBA年次会合から(1)〜(米国)

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 1月31日から2月3日まで、テネシー州ナッシュビル市で開催された、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の第120回年次会合およびトレードショーに全米や世界各地から、主催者発表によると9000人を超える牛生産者その他の関係者が参集した。
 2月2日に開催された年次会合の分科会である「ワシントンDC情勢」のセッションでは、肉牛生産者にとっての2017年の課題として、NCBAが取り組んでいる事項についての説明がなされた。

 コリン・ウッドオール副会長兼ワシントン事務所長兼主任ロビイストは、トランプ大統領になってから、重要事項は全てツイッターで公表されるようになっており、農畜産業の声が届きにくくなっているが、関係構築に努力している旨が説明された。同副会長は、規則を75%削減するという同大統領の選挙戦中の公約を「規則を1本公布するごとに現行規則を2本廃止する」という大統領令で実行に移しつつあることには歓迎の意を表明し、畜産関係者が強く反対している「穀物検査・パッカー・ストックヤード局(GIPSA)」改正規則が廃案になることに期待を示した。同副会長によれば、GIPSA改正規則は、生産者による産品の付加価値化ができなくなる方向で改正されており、ひいては消費者の利益にもならないものとされている。同副会長は、GIPSAだけでなく、原産地表示義務(COOL)も例に挙げ、連邦政府の定める義務プログラムは、マーケティングに役立ったことがなく、消費者の要求も満たしていないとし、政策関与を嫌う米国の畜産関係者の声を代表する発言を行った。
 同副会長は、トランプ大統領が、就任早々の大統領令で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの米国の永久離脱を宣言したことには、遺憾の意を表明したものの、NCBAとして完全にTPPをあきらめたわけではなく、今後も復活のための努力を続けるとした。この根拠として、与党共和党が上下両院の過半を占めるという現在の強い立場を維持できるとは思えず、2018年に行われる中間選挙で共和党が敗北し、政権が沈没する可能性を挙げ、現在の状況はあと1年半であると強調した。

各担当部長から説明された重点事項は、以下のとおりとなっている。
1. 連邦政府所有地での牧畜
 絶滅危惧種に指定された昆虫などが1000種以上にも上っており、連邦政府所有地で牧畜を営む者が継続の危機に瀕している。規制削減を謳うトランプ政権に期待している。

2. 税制改正
 牛生産者は、土地と家畜は保有しているものの、流動資金が少ないため、現行の相続税の下では、次世代が牧畜を継続できない。このため、相続税の撤廃を要求している。現政権は、税制改正を基本方針としているため、撤廃実現に期待している。

3. 次期農業法
 次期農業法の成立までには長い道のりがあるが、NCBAは、次期農業法が(1)強力な研究、(2)環境保護(現行の「環境保護報奨金プログラム(EQIP)」のような制度)、(3)家畜病害虫被災防止(口蹄疫を念頭)を含むことを重点とする。また、マーケティングを規制する、COOLの復活、GIPSA規則の改正、チェックオフ制度の改革には断固反対する。

4. マーケティング
 マーケティング関係では、(1)大幅な価格変動の抑制、(2)価格変動のリスク管理、(3)価格決定の透明性の向上が課題となっている。

5. 環境保護庁(EPA)
 EPAは、畜産経営を止めさせることに専念しているように見え、水清浄化法に基づく「米国の水(WOTUS:Water of the United States)」を導入しようとしていることが典型である。WOTUSは、トランプ政権で一旦施行を停止されているが、2月1日に上院ヒアリングを終了し、承認の見込まれるプルイット氏がEPA長官に就任すれば、廃案になることを期待している。

6. 貿易
 大統領令で、米国はTPPから離脱したが、NCBAにとって重要度が高いことには変わりがない。北米自由貿易協定(NAFTA)については、大統領に間違った情報が伝わっているので、巻き返したい。日本、カナダ、メキシコといった極めて重要な市場を失うことがないよう努力する。
【調査情報部 平成29年2月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397