農業調査会社であるキャトル・ファックス社は、テネシー州ナッシュビル市で開催された全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の第120回年次会合で、2017年の気象および穀物見通しに関するセミナーを開催した。同社は、1968年に設立され、肉牛生産者を中心とした会員の会費で運営されており、運営方針などは、肉牛生産者などで構成される理事会で決定される。
(1)気象
2017年の気象見通しは、今回で39回目のセミナー登場となったアート・ダグラス・クレイトン大学名誉教授によって行われた。同名誉教授は、現在長期予報で一般的となっている気象モデルを使った予報ではなく、各種気象条件の変動から予報を行うというアナログ手法を採用している。
作物生産との関係では、次のことが述べられた。
2017年春は、温暖となると見込まれ、中央帯では降水量が多くなると見込まれる。しかし、夏には、バミューダ海域の高気圧がコーンベルト南部まで勢力を拡大することが予想されるため、オハイオ川から中部平原、南部平原にかけて、初夏の気温が平年を1度程度上回り、降水量が平年より75%少なくなると見込まれる。この干ばつ傾向は、ロッキー山脈北部地帯まで広がると見込まれるが、コーンベルト北部は、この影響を免れると見込まれる。
(2)作物
マイク・マーフィー・アナリストによれば、2017年の主要作物の作付面積は、トウモロコシが9290万エーカー(前年比110万エーカー減)、大豆が8390万エーカー(同50万エーカー増)、小麦が4640万エーカー(同380万エーカー減)となると見込まれる。
2017年のトウモロコシに関する見通しでは、次のことが述べられた。
米国では、家畜・家禽の頭羽数が増加していることから、今後2年間は、トウモロコシの飼料需要が高い水準を維持すると見込まれる。作付面積は減少するものの、単収が過去のトレンドである1エーカー当たり170ブッシェルにとどまっても、消費量に対する在庫量の割合は、13〜15%の高い水準を維持すると見込まれるため、5月から12月までの価格は、現在を下回り1ブッシェル当たり2.90〜3.10米ドルの範囲にとどまると見込まれる。ちなみに、小麦では、消費量に対する在庫量の割合が46%まで高まって、価格が低下していることが、かなりの程度の作付面積の減少見込みにつながっている。