米国の大手食品企業イングレディオン社、国内外で相次ぐ買収
最終更新日:2017年2月9日
米国に本拠を置き、世界各国に展開する大手食品企業であるイングレディオン(Ingredion)社(注1)は2016年11月以降、米国内外で食品関連企業の買収を相次いで実施している。
(注1)イングレディオン社は、米国を拠点に世界各国で事業展開するでん粉、甘味料、栄養補給食品などの総合的な食品原料製造企業。
中国のでん粉製造企業を買収
イングレディオン社は2016年11月末、中国のでん粉製造企業である山東省農業特種トウモロコシ開発会社(以下「トウモロコシ開発会社」)(注2)の買収完了を発表した。イングレディオン社は、中国に二つ目の製造拠点を有することになる。同社は、トウモロコシ開発会社の工場で天然でん粉を製造し、それをすでに所有する上海の工場において、食品産業向けの高付加価値製品の生産に利用する計画となっている。
本買収について、イングレディオン社は、製造体制が統合され、製造コストの低下、供給チェーンの強化、さらには、食品の安全性向上や持続的な製造体制の構築など、さまざまな効果がもたらされるとしている。また、トウモロコシ開発会社の施設は、原料調達に理想的な山東省に立地し、将来の市場拡大に対応する拠点になるとして、期待を示している。
(注2)山東省農業特種トウモロコシ開発会社は、主に食品産業向けのでん粉とでん粉関連製品の製造企業。1万戸以上の生産者との提携により原料トウモロコシを調達。中国語名「山東華農特種玉蜀黍開発有限公司(本記事表示上の制約から、一部中国語(簡体字)を日本語の漢字に変換)」を仮訳。
米国内の食品原料企業も買収
イングレディオン社は2017年1月、米国内のテクスチャー改良剤(注3)や増粘安定剤(注4)の製造企業であるTIC・ガム社(注5)の買収完了を発表した。
イングレディオン社はこれについて、高付加価値原料製品の種類を広げ、製造能力の拡大や製造技術の向上がもたらされるとしている。そして、今や、イングレディオン社は、ナチュラル、オーガニック、クリーンラベル(注6)といった観点を重視した総合的なテクスチャー改良剤の供給企業となったとして、その意義を強調している。
(注3)テクスチャー改良剤は、たれやソースなどにとろみをつけ舌触りを良くするため、コーンスターチ、ばれいしょでん粉、小麦でん粉などを原料とした加工でん粉を基に製造される。
(注4)増粘安定剤は、たれやソースなどに粘り気をつけたり、ゼリーなどの形状を安定させたりするため、コーンスターチ、ばれいしょでん粉、小麦でん粉などを原料とした加工でん粉を基に製造される。
(注5)TIC・ガム社は、テクスチャー改良剤、増粘安定剤の製造企業。100年以上の歴史を有し、菓子、パン、乳製品、飲料、ソースなどさまざまな食品製造企業に製品を供給。
(注6)クリーンラベルは、一般的に、表示が単純明快かついわゆる食品添加物を利用しておらず、「ナチュラル、ヘルシー、クリーンな原材料」のみを利用している食品に対して使われる呼称。
【根本 悠 平成29年2月9日発】
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