豪州乳業大手、赤字計上(豪州)
豪州フィードロット協会(ALFA)と豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は3月6日、共同で四半期ごとに実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2016年10〜12月期)を公表した。これによると、2016年12月末のフィードロット飼養頭数は、93万5788頭(前年比6.2%減、前回比18.6%増)となり、記録的な高水準となった前年こそ下回ったものの、前回調査からは大幅に増加し、90万頭台に回復した(図1)。
ALFAによると、肥育もと牛価格は依然として高いものの、飼料穀物価格が前年同期比で2〜3割安となっている中、穀物肥育牛肉への需要が世界的に高まっており、多くのフィードロットでは、稼働率を引き上げたり、出荷体重を増加させたりと、生産効率を高める動きが見られるとしている。
1.集乳量:競争激化などを受け大幅減
集乳量は、161万1000キロリットル(前年同期比20.6%減)と、大幅減となった。集乳量の減少についてMG社は、他の乳業メーカーへの供給先変更(競争の激化)が主因であるとしているが、9月(春先)の多雨による牧草生育環境の悪化に伴い、主産地のビクトリア(VIC)州で生乳生産量が前年同期比で1割近く減少したことや、前年度終盤の生産者乳価の引き下げに伴い、離農が増加したことも影響しているとみられる。
2.売り上げ:海外市場の不振を受けかなり大きな減少
売り上げは、11億7600万豪ドル(1046億6400万円、同14.8%減)とかなり大きく減少した。
部門別に見ると、食品部門は5億5800万豪ドル(496億6200万円、同19.7%減)と大幅減となった。このうち国内向けは4億8300万豪ドル(429億8700万円、同21.1%減)と、小売店との安価な供給契約に引きずられる形で大幅に減少し、海外向けも7500万豪ドル(66億7500万円、同9.6%減)と、海外市場での成人向け粉乳の不振が響き、かなりの程度減少した。
原料部門は4億8100万豪ドル(428億900万円、同7.0%減)と、比較的小幅な減にとどまったが、これは、集乳量の減少に伴い、原料部門に仕向ける生乳が減少したためとしている。
3.純利益:「偶発的な」負債増に伴い赤字に転落
MG社は、余剰在庫の一掃による運転資本の調整など、コスト減に向けた取り組みが一定の成果を挙げたことから、売上総利益(売上−売上原価)は1億9400万豪ドル(172億6600万円、同3.5%減)と、比較的小幅な減少にとどまったとしている。
しかし、VIC州北部のコブラムでの消費者向けチーズ製造プラントの建設や、乳価引き下げに対応するための緊急支援プログラムなどの「偶発的な」負債の増加(6億7700万豪ドル(602億5300万円、同72.3%増)を受け、3190万豪ドル(28億3910万円)の税引き後純損失を計上し、前年同期の黒字(1000万豪ドル(8億9000万円)の税引き後純利益)から赤字に転落した。1株当たり配当金も、1.7豪セント(1.5円)と前年同期の2分の1近くに落ち込んだ。
4.今後の見通し:国際市況の回復が好影響
MG社は、今年度の下半期について、回復傾向にある乳製品国際価格が、業績に好影響をもたらすとして、生産者乳価を、乳固形分1キログラム当たり4.86豪ドルから同4.92豪ドル(433→438円)へ引き上げると発表した。年度末の乳価見込みについては、同4.95豪ドル(441円)のまま据え置いている。
また、次年度については、良好な気候が見込まれることや、国際市況が回復基調にあること、コスト減に向けた取り組みもこれまで以上の成果が期待できることから、今年度よりも高い乳価を提示できると自信を持っている。
5.現地の見方:今後の動向に不安広がる
一方で、現地報道によると、従業員の間では、コスト削減プログラムの一環として、VIC州の北部や、東部ギプスランド地域の複数の工場が閉鎖されるのではないかという不安が広がっている。また、同社の経営責任者の一人は、現地メディアの取材に対し「現段階では、年度全体の集乳量や損益の見通しについては言及できない」と述べており、MG社の動向に注目が寄せられている。
【竹谷 亮佑 平成29年3月3日発】
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