生鮮牛肉のタイ向け輸出条件が緩和(米国)
米国農務省(USDA)は、米国産生鮮牛肉のタイ向け輸出に関する輸出条件の変更を公表した。同変更は、食品安全検査局(FSIS)のウェブで2017年4月5日付けのタイ向け食肉輸出のガイダンスページにおいて確認できる。
これについて米国食肉輸出連合会(USMEF)は、これまでの「30カ月齢未満の牛由来」の月齢条件が「全月齢の牛由来」に緩和されるほか、「骨なし肉」のみから「骨付き肉」も対象となる旨の輸出条件の変更があったとしている。
これまでの月齢制限などの条件は、米国で2003年に確認されたBSE(牛海綿状脳症)の発生によるものである。新たな輸出条件で、2017年4月1日以降にと畜された牛由来であれば、全月齢に由来する骨付きも含む牛肉の輸出が可能となり、これまで必須であったタイ向け骨なし牛肉用EVプログラム(注)の適用は不要となる。なお、同年3月31日以前にと畜された牛由来の牛肉であっても、同プログラム下で生産された骨なし牛肉は引き続き輸出可能である。
(注) EV(Export Verification)プログラム:輸出される牛肉が輸出相手国の条件に合致していることをUSDA農業マーケティング局(AMS)が保証するプログラム。
今般の条件緩和を受け、USMEFは今後の輸出増につながる動きとして歓迎の意を示しているが、内臓肉は引き続き輸出できないことに留意すべき旨や、今後、USMEFとしても、横隔膜の分類など内臓肉や輸出可能な牛肉加工品の定義について、引き続き明確化を求める旨を表明している。
また、USMEFのJoel Haggardアジア太平洋担当上席部長(Senior Vice President)は、今般のマーケットアクセス拡大について、以下のようにコメントしている。
― タイを含め13年間にもわたってBSEの規制を敷いている多くの国々は、骨付き肉と骨なし肉のリスクは同等であると科学的に立証されているにもかかわらず、骨なし肉のみ輸入を解除する立場をとってきた。
― わずか1ミリメートルの骨片が混入していたために、高級部位の牛肉を含めた積荷全体が輸入許可されなかった(注:通常は全廃棄か返送処分)事例は、忘れることはできないが、新たな条件下ではもう発生しないとみられる。
― タイは、米国産牛肉の輸出先としては、市場規模が小さく(2016年輸出額は約300万米ドル)、主要な市場にはなり得ないものの、新たな条件の適用は、輸出業者の新たな関心を生み出すだろう。また、同国は、世界のグルメスポットとしても知られており、米国産牛肉を売りにした店舗も多くあると聞く。実際、タイの輸入業者からショートリブやプライムリブの骨付き牛肉カットについての具体的な問い合わせ(アイテムリストや価格)が既に来ているようだ。
― 他のアジア市場と同様に、高品質牛肉で(タイ・豪州自由貿易協定の恩恵を受けている)豪州産と競合することになるだろう。
タイにおける牛肉の消費量は、周辺国や先進国と比べて著しく少ない(OECDによると2015年の一人当たり消費量は1.75キログラム)ことが知られており、豚肉や家きん肉との価格差や宗教的な理由から特に高齢者層が牛肉を食べない傾向があるためと言われている。
ただし、報道情報などによると、牛肉は、従来あまり消費されていなかったが、首都バンコクでは食習慣が変化しつつあり、日本食の人気も手伝って、しゃぶしゃぶ、焼肉、すき焼きなどを提供する店舗が人気を博していると伝えられている。近年、日本産和牛の同国への輸出量が堅調に増えていることからも、高品質な牛肉への需要も高まっているものとみられる。
なお、日本産牛肉についても、日本とタイの2国間の検疫協議の結果、以前は30カ月齢未満の牛由来の骨なし牛肉しか輸出できなかったが、2016年11月28日以降にと畜された牛由来のものであれば、内臓や骨付き牛肉も含む全月齢の牛肉の輸出が認められるようになっている。
【調査情報部 平成29年4月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397