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砂糖産業内の紛争に連邦政府が異例の介入(豪州)

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最終更新日:2017年4月20日

連邦政府が強制行動規範を施行

 豪州連邦政府は4月5日、「砂糖産業に対する強制行動規範(Competition and Consumer (Industry Code−Sugar) Regulations 2017)」を施行した。同規範は、サトウキビ生産者、製糖企業および砂糖輸出企業の3者間の紛争仲裁手続きについて規定したものである。これを受け、クイーンズランド(QLD)州バーデキン地区の生産者団体は4月6日、地区内唯一の製糖企業であるウィルマー社と、サトウキビ生産者と砂糖輸出企業との契約(GPA)に先立つサトウキビ供給契約(CSA)を締結し、QLD州の砂糖産業内でおよそ2年にわたり続いていた紛争が収束に向けて一歩前進した(注)

施行の経緯

 この紛争は、外資系製糖企業(ウィルマー社(シンガポール系)他2社)が2014年、QLD州砂糖公社(QSL)による一元輸出が実質的に継続していた中、2017/18砂糖年度(7月〜翌6月)以降、QSLを介さない砂糖輸出を行う旨を表明したことに端を発する。2015年12月には、「QLD州砂糖産業法(the Sugar Industry Act 1999 (QLD))」が改正され、生産者がQSL以外の砂糖輸出企業を選択できるよう改正され、最大手のウィルマー社以外の2社はQSLを選択する生産者ともCSAを結ぶことにしたのに対し、ウィルマー社は直接輸出に固執し、交渉が長期化していた。
 連邦政府は、今回の規範施行の背景として、砂糖輸出産業がQLD州で最も重要な産業であり、持続的な発展と効率的な管理が期待されながら紛争が続いていたことから、QLD州砂糖産業法などの既存の枠組みを早急に補う対応が必要であったことを挙げている。ジョイス副首相(兼農業水資源相)は3月29日、キャンベラでの記者会見で「これまでは、政府による不恰好な関与が行われる前に最善の合意に達してきたが、今回は、連邦政府が関与することになった。」と述べている。

砂糖産業内の反応

 バーデキン地区の生産者団体代表のマラノ氏は、「かなりタフな交渉を続け、一応満足できる契約内容となった。」としている。
 一方、豪州砂糖製造事業者協会(ASMC)は4月5日、ウィルマー社が他の2社同様、QSLを選択する生産者を受け入れることとしてQSLと3月2日に大筋で合意に達していたにもかかわらず、連邦政府が協議もなく「手荒い」規制を行使したとして、「未来の豪州農業への投資者が、気まぐれな政治圧力の犠牲者になりうるという明らかなメッセージとなってしまった。」と非難する声明を発表している。

 (注)詳細は、「豪州砂糖産業の動向−FTA/EPA締結・交渉進展と砂糖産業法の改正−」『砂糖類・でん粉情報』(2016年11月号)ALICセミナー「豪州砂糖産業の動向−FTA/EPA締結・交渉進展と砂糖産業法の改正−」(2017年1月24日開催)を参照されたい。

【丸吉裕子 平成29年4月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8609