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トランプ大統領、カナダの酪農政策に言及(米国)

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 カナダの酪農政策をめぐる米加間の応酬が過熱している中、トランプ大統領は18日、ウィスコンシン州で行った演説の中でカナダの酪農保護政策に触れ、米国にとって不公平な同国の政策に関して、早急に打開策を模索する姿勢をあらわにした。
 
 米国では今月初旬から業界団体によるカナダ酪農政策批判が相次いでいる。5日に、全米生乳生産者連盟(NMPF)、米国乳製品輸出協会(USDEC)、国際乳食品協会(IDFA)が連名で政権に対し、カナダの保護主義的酪農政策に反撃するよう要請する声明を出すと、13日には上記3団体に州農業省全国協会(NASDA)加えた計4団体がトランプ大統領に向けて、同様の旨を請願する書簡が発出された。また、18日には生乳生産量でそれぞれ全米第2位、第3位のウィスコンシン州およびニューヨーク州の両知事が名を連ね、トランプ大統領宛てにカナダの保護主義的政策への対抗を要請する旨の書簡を発出した。
 
 声明が相次いだ背景には、カナダで「クラス7」と呼ばれる新たな乳価が導入されたことにより、上述の2州を中心とする米国中西部酪農生産地帯で生産された限外ろ過牛乳(注)のカナダ向け輸出が5月以降、限定的になるとの見込みがある。「クラス7」の導入により、カナダのチーズ製造企業は米国産に比べ安価な国産限外ろ過牛乳を求めるようになるため、一大輸出市場を失った米国中西部の乳業メーカーは契約先の酪農生産者からの集乳量を抑制せざるを得ない状況に陥っている。5日の声明の中でも、USDECのトム・ヴィルサック会長兼CEOは「米国の連邦および州政府は、米国との貿易上の約束を無視し、米国産乳製品を締め出して米国の酪農家に損害を与える政策を続けるというカナダの意図的な決断を放置することはできない」と述べた。
 
 (注)生乳にろ過膜を透過させて乳タンパクを濃縮したもの。主にチーズの原料となる。
 
 こうした中、トランプ大統領は18日、ウィスコンシン州で行った演説において、米国の酪農業がカナダの保護主義的政策によって打撃を受けていると述べ、国内酪農産業を守る方針を示した。他方、一連の批判に対して、カナダのデイビッド・マクノートン駐米大使は同日、上述の2州の両知事に宛てて書簡を発出し、「カナダの酪農政策が米国の酪農生産者に経済的損失を与えているとの主張は受け入れられない」とした。同書簡は、米国酪農現場が困窮している原因について、USDAが2月に公表した農業需給予測にもある通り「米国と世界の生産過剰」であり、カナダは無関係であるとしている。なお、NMPFのジム・マルハーン会長はこれらの件それぞれについて直後に声明を出し、トランプ大統領の発言については感謝の意を表明した一方、マクノートン大使の書簡に関しては、あくまでカナダの政策変更こそが元凶としている。
【野田 圭介 平成29年4月21日発】
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