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米中両政府、米国産牛肉の対中輸出を7月16日までに再開すると発表(米国)

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 2017年5月11日、米中両国政府は、先のトランプ-習首脳会談で策定することとしていた貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」を発表し、両国間で合意に至った10項目の1番目として、以下のとおり米国産牛肉の輸入再開について言及している。
 
『米中間で技術的な協議をもう1ラウンド実施した後、中国は2017年7月16日までのできるだけ早い時期に、1999年の米中農業協定や国際的な食品安全・動物衛生の基準に合致した形で、米国産牛肉の輸入再開を許可する。』

 これに関して、中国は昨年9月、米国産牛肉に対する輸入禁止措置の一部解除について発表していたが、既報(2016年10月13日発海外情報)のとおり、実際の輸入再開までには、両国政府当局間による輸入条件の協議や中国政府当局による現地調査の実施などのステップを踏む必要がある。輸入はいまだ再開されていないが、すべての米国の牛肉生産者が、この輸入再開に向けたプロセスの進展を待ち望んでいるであろう。昨年9月以降、米国で大統領選挙があり、トランプ政権立ち上げの諸手続きにおいて、5月15日にライトハイザー氏が正式にUSTR代表に就任し、ようやく同政権の閣僚が勢揃いした。一方で、その間の4月6〜7日に首脳会談が実施され、北朝鮮情勢の問題などとともに、本件についても議題に含まれていたのではないかと報じられていたものの、それに関する公表はなされてこなかった。
 
 今般の発表から、昨年10月の既報で図示した3つのステップのうち、(2)については、「もう1ラウンド」と明記されているように、既に両国の当局間で輸入条件協議が実施されており、合意間近と推察される。米国の牛肉関連団体への聞き取りによると、昨年9月に中国政府一行が米国内のと畜場や農場を訪問したとのことであるが、(3)の状況については明らかにされていない。
 
 いずれにせよ、両国政府から発表された情報によると、大きな状況の変化が無ければ、米国産牛肉の中国への輸出が7月16日までに実際に再開すると考えるのが妥当である。輸入条件については、公表されていないものの、これまでの発表や中国が現在他国に課している輸入牛肉の条件や現地関係者からの聞き取りなどを勘案すると、30カ月齢未満の牛由来の牛肉(骨付き/骨なしとも可)であって、トレーサビリティが可能であることなどが含まれると推測される。

 米国政府は、日本向け輸出などにも適用してきたEV(Export Verification)プログラムを中国向けの輸出条件に合わせて策定し、同プログラムに沿って生産された牛肉が同国に輸出されると考えられる。
 
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 なお、今般の両国政府の発表を受け、米国の主な牛肉生産者団体は、以下のように声明を発表している。
 
〇 米国食肉輸出連合会(USMEF : U.S. Meat Export Federation)
  USMEFは、13年以上もの長い間、中国の市場から締め出されていた米国産牛肉が、同市場に再び参入することを認めるという、本日発表された米中両国間のハイレベルな合意を歓迎する。USMEFとその会員一同は本日の発表にこぎ着けるまでのトランプ政権をはじめ、USDAおよびUSTRの職員らの尽力に対し多大なる感謝を申し上げる。

〇 全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA : National Cattlemen's Beef Association )
  世界最大の市場から13年間にわたって締め出されていたが、我々は米国産牛肉の中国への輸出再開について合意に至った旨の発表を大いに歓迎する。本件が米国肉用牛生産者にとっていかに有益かについては言うまでもなく、本件を達成したことはトランプ政権にとって多くの称賛を受けるに値するものである。我々は今後14億人もの新たな顧客に対して米国内で提供しているのと同等の安全性とおいしさを兼ね備えた米国産牛肉を提供できることを心待ちするとともに、いつの日か北京でトランプ大統領と習主席に米国産熟成サーロインステーキを提供できることを楽しみにしている。 

〇 北米食肉協会(NAMI : North American Meat Institute)
  食肉業界は長年の間、米国産牛肉の中国市場へのアクセスを模索してきた中で、今般の合意発表は重要で大歓迎すべき節目の出来事である。中国での高品質な牛肉の需要は高く、今回の合意内容は概して牛肉業界にとっても米国経済にとっても非常に大きな可能性を有している。トランプ政権は中国政府との協働に当たり見事なリーダーシップを発揮し、今般の交渉に決着をつけてくれた。この合意内容は重要であり、先のトランプ−習首脳会談により構築された100日計画の具体的な成果である。真摯に問題解決に取り組んでいただいた両首脳に対し感謝の意を表する。

 
【調査情報部 平成29年5月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533