フォンテラ社、今年度の乳価引き上げと次年度の当初乳価を発表(NZ)
ニュージーランド(NZ)最大手の酪農協系乳業メーカーであるフォンテラ社は5月24日、2016/17年度(6月〜翌5月、以下「今年度」という。)の生産者支払乳価を、乳固形分1キログラム当たり(注1)0.15NZドル(12円:1NZドル=80円)引き上げ、同6.15NZドル(492円)とすると発表した。今年度の1株当たりの配当金(注2)については、現行の0.40NZドル(32円)の水準を維持する見通しとしている。
今年度は、当初、同4.25NZドル(340円)と、2015年の乳製品国際価格の低迷を受けた低い設定であったものの、乳価参照製品(注3)の国際市況が上昇を続けていることを受け、計4回の引き上げを実施した。
また、同社は、2017/18年度(以下、「次年度」という。)の生産者乳価の支払見込みについても初めて発表し、今年度より同0.35NZドル(28円)高い、同6.50NZドル(520円)とするとした(図)。次年度の配当金は、8月初頭に改めて発表するとしている。
次年度の乳価について、同社代表は、今後も国際市況が回復基調で推移するとみられるためとし、今回の発表は、低乳価により経営が悪化していた多くの酪農家にとって、朗報となるだろうとしている。
現地報道によると、次年度の乳価は、決して「上げ過ぎ」ではなく、直近の乳製品国際市況を反映した妥当なものであるとしている。また、酪農家からは、膨らんだ借金を返済できるとして、今回の発表に対し安堵の声が聞かれている。
さらに同社は、2016/17年度の第3四半期まで(8月〜翌4月)の業績を発表した(表)。これによると、集乳量は153万キロリットル(前年同期比2.6%減)と、降雨による牧草の生育不良を受け、ピーク時である春先の生産が1割近く落ち込んだことから、前年度をわずかに下回った。ただし、秋(2〜3月)にかけて気候条件が回復したことで、直近の生乳生産は前年を上回って推移している。
乳製品生産量のうち、乳価参照製品は、利益率の高いチーズや外食向け乳製品といった非参照製品に生乳が優先して仕向けられたことから、同7.7%減とかなりの程度減少した。また、利益率については、乳価参照製品の低い利益率を受け、前年同期を4.2ポイント下回った一方、売上額は、乳製品国際価格の回復から、同7.8%増と前年同期を上回った。
(注1)乳固形分の換算
- 2015/16年度におけるNZの生乳に占める乳固形分(乳脂肪と乳タンパク質の合計。乳糖は含まない。)の比率は、8.57%となっている。この比率で割り戻すと、乳固形分1キログラムは、生乳11.67キログラム程度に相当する。
(注2)フォンテラ社の配当金
- 通常、フォンテラ社へ生乳を出荷する生産者は、生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1キログラムに対して1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者乳価と配当金を合わせた金額となる。
(注3)乳価参照製品
- 乳価参照製品(Reference products):全粉乳、脱脂粉乳、バター、バターミルクパウダー、バターオイルの5品目。主に原料乳製品として扱われることが多く、国際市場における流通量が多いことから、同社の乳価の計算に用いられている。これら以外の品目は、非参照製品(Non-referenced products)と総称されている。
【竹谷 亮佑 平成29年5月26日発】
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