トランプ政権が北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に関する意向を議会に提出した5月18日以降、畜産業界からは同政権に向けてさまざまな声明が寄せられているが、業界によって反応に違いがみられている。
食肉分野では異例の反応が相次ぎ、本件に対する危機感が鮮明になっている。牛肉業界では、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)が、カナダ肉用牛生産者協会(CCA)およびメキシコ畜産連合会(CNOG)との連名で、加盟3カ国の各首脳に宛てた書簡を発出し、肉用牛生産者に関わる文言について、その内容が保持されることを求めた。また、同書簡は、かつて北米の食肉と家畜の貿易に甚大な影響を与えた原産地表示(COOL:Country of Origin Labeling)規則についても触れ、WTO紛争にまで発展した同規則の復活を望まないとする姿勢が改めて示された。一方、豚肉業界では、全国団体としては全米豚肉生産者協議会(NPPC)が単独で意見を発出したものの、その1週間後の5月25日に約40ページに及ぶ白書を公開し、NAFTAの重要性を多方面から詳細に説くなど、積極的な対応を展開している。
一方、酪農乳業界は、国際乳食品協会(IDFA)、全米生乳生産者連盟(NMPF)、米国乳製品輸出協議会(USDEC)の3者が連名で声明を発出した。同声明では、カナダの新酪農政策や地理的表示をめぐる係争などにも触れ、食肉分野とは異なり、同業界が特にカナダに対して現行協定に不満を有していることが明らかとなっている。