乳業メーカー、新年度乳価を発表(豪州)
豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は6月6日、2017/18年度(7月〜6月、以下「新年度」という)の生産者支払乳価を発表した。新年度の当初乳価は乳固形分1キログラム当たり4.7豪ドル(399円:1豪ドル=85円)、最終的な支払見通しは同5.2〜5.4豪ドル(442〜459円)となるとしている。
これは、16/17年度(以下「今年度」という)の最新の乳価(同4.95豪ドル(421円))よりは高いが、他の主要乳業メーカーが示した新年度の当初乳価を下回る水準となった。例年、同社の新年度の乳価の発表は6月末となることが多いが、今回は、酪農家が収支見通しを立てやすくするため、早めに発表したとしている。
MG社と競合する乳業メーカー各社は、乳製品国際市況が回復基調にある中、主産地のビクトリア(VIC)州での集乳量を増やすべく、同社よりも高い乳価を提示している。
今回の乳価設定について、MG社は、乳製品の国際市況は、ここ1年で一定の回復は見られたものの、粉乳類については過去10年の平均を下回るなど、依然として完全な回復には程遠く、こうした状況に対する慎重な見通しを反映したものであるとしている。また、最終的な支払見通しに幅があるのは、こうした国際市況の動向や、為替相場といった不確定要素を考慮したためとしている。
また、今回の乳価発表に先立って、5月末には生乳供給報奨プログラム(Milk Reward Program)が発表された。これは、新年度も引き続き同社と生乳供給契約を締結した酪農家には、乳価を同0.1豪ドル(9円)上乗せし、直近5年間同社に供給していなかったが新たに同社と生乳供給契約を締結した酪農家には、乳価を0.05豪ドル(4円)上乗せするというもので、傘下酪農家の供給継続へのインセンティブを与えるとともに、新規集乳の増加を図る意図があるとみられる。
同社社長は、就任後、工場の閉鎖などの再建策を講じてきたものの、業績は期待したほどには回復していないとしており、経営基盤強化に向けた戦略プランの立案を進めている。これについては、今年度の業績と併せて8月に公表予定としている。
なお、今年度のMG社の集乳量は、気候条件の悪化に伴う生産量の減少に加え、酪農家の生乳供給先の変更を受け、270万キロリットル(前年度比22.9%減)と大幅に減少すると見込まれている。新年度は、気象条件の好転に伴い生産量はわずかに回復するものの、供給先を変更した農家が戻らないと見込まれることから、集乳量は引き続き減少し、250万キロリットル(同7.4%減)と見込まれており、この結果、新年度の同社の国内での集乳シェアは、27.2%(同3.0ポイント減)となり、3割を下回るとしている(表)。
現地専門家によると、多くの酪農家にとって、MG社の新年度当初乳価は「採算割れ」となる水準で、資金繰りが悪化するとしており、今後、供給先を変更する酪農家の生乳をめぐる、乳業メーカー間の集乳競争が激化するとみている。
【竹谷 亮佑 平成29年6月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532