欧州委員会は7月7日、2021年を開始時期とする次期共通農業政策(CAP)の合理化と簡素化の検討に向けて募集したパブリックコメントの結果を公表した。
パブリックコメントは、2017年2月2日〜5月2日の3
カ月間にわたって募集され、生産者、一般市民、各種団体、その他利害関係者を含む幅広い層から32万2000件を超える意見が寄せられていた。
欧州委員会は7月7日、「意見を言おう(Have Your Say)」と題された次期CAPの検討に向けた公開会議でパブリックコメントの分析結果を公表した。
ホーガン農業・農村開発担当欧州委員は、会議の冒頭、「非常に多くの意見が寄せられ、CAPによる農業支援、5億人を超えるEU市民に対する食料の供給、農村地域への投資に対する市民の高い関心が示された」と述べた。
パブリックコメントでは、食料安全保障や環境・気候変動対策など国境を超えたEUレベルでの政策、経済的、社会的、地理的な結び付き、農業生産工程を共有する共通枠組み、共通予算、生産者の所得補償、市場の不透明性に対する対応の必要性について認識が確認された。
一方、農業の役割、CAPの目的、農村開発については、生産者と一般市民で認識の違いが見られた。
農業の役割については、生産者は食料安全保障を重視するのに対し、一般市民は環境保護やアニマルウェルフェアを重視している。CAPの目的については、生産者は適切な生活水準の保障を挙げたのに対し、一般市民は安全な食料の供給や環境保護を挙げるとともに、新たにアニマルウェルフェア、有機農業、農産物の品質の向上に関する方針を盛り込むことを求めている。
この他、CAPに消費者保護や人の健康に配慮した視点を盛り込むこと、生産者の立場の強化、条件不利地域などでの営農に対する所得補償の拡充を求める声や、新規就農の障害は農地取得の困難さと低所得であることからさらなる新規就農支援策も盛り込むべきとの声があった。
また、CAPの簡素化は大きな命題であり、複雑な補助要件と申請手続きの簡素化の必要性が挙げられた他、EUと加盟国における手続きの重複の回避、データベースと新技術(スマートフォンなど)の活用、電子政府の利用促進などを進めるべきとされた。
パブリックコメントの結果は、欧州委員会が現在進めている将来に向けた農業と食料に関する検討に取り上げられ、起こりうる影響評価などを経て、CAPの合理化と簡素化に関する報告書として2017年末までに公表される予定である。