2016/17年度主要穀物の生産状況等の調査結果(第10回)を公表(ブラジル)
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は7月11日、2016/17年度(10月〜翌9月)第10回目となる主要穀物の生産状況等調査結果を公表した。当該調査は、春植えの夏期作物(大豆、第1期作トウモロコシなど)と、秋植えの冬期作物(第2期作トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦など)の生産予測を毎月公表するものである。
これによると、主要穀物の作付面積は前年度をやや上回り、生産量はエルニーニョ現象による干ばつ被害で不作であった前年度を大幅に上回ると見込まれている(表1)。
トウモロコシは、前年度の干ばつによる需給逼迫を受けて作付面積が増加した上、単収も増加したことから、前年度比44.3%増の9600万トンを上回る生産が予測されている。また、大豆も、作付面積の微増や単収の回復により、初めて1億トンを超えるとの予測となっている(図1)。
なお、今回の予測で、2016/17年度の大豆とトウモロコシの生産量は、いずれも7回連続で上方修正されたこととなり、記録的な増産が見込まれている(図2)。
トウモロコシ生産量、前年度から大幅増を見込む
第1期作、前年度比18.0%増
第1期作トウモロコシの生産量は、前年度比18.0%増の3040万トンを見込んでいる(表2)。多くの主産地で生育期に一定の降雨を記録するなど、天候に恵まれたことから、前回報告から8万トン程度上方修正された。
主要生産州(上位5州)で見ると、作付面積、単収ともに良好で、生産量は同13.8%増の2205万トンと予測されている。
第2期作生産量、前年度比1.6倍へ
第2期作トウモロコシの生産量は、単収が干ばつで大幅な低下を記録した前年度から回復するため、前年度比61.0%増の6563万トンを見込んでいる(表3)。
地域別に見ると、主産地であるマットグロッソ州では、播種後から適度な降雨を記録したことから、生育が順調に進み、過去最高の2656万トンの生産量と予測されている。
マトピバ地域の生産量は回復するも、2014/15年度の水準には及ばず
CONABは、新興農業開発地域である北東部を中心としたマトピバ地域のトウモロコシ生産量を、エルニーニョ現象に伴う深刻な干ばつで大幅に落ち込んだ前年度からの回復を見込んで、前年度比72.1%増の620万トンと見込んでいるが、2014/15年度の水準(636万トン)には及ばない予測となっている(表4)。
大豆生産量、過去最高を見込む
大豆生産量は、主産地で生育期の11〜12月に適度な降雨を記録したことを受けて、前回報告から91万トン程度上方修正され、前年度比19.4%増の1億1393万トンと過去最高となると見込まれている(表5)。
作付面積は、前年度をわずかに上回り、単収は、エルニーニョ現象による干ばつなどで減少した前年度からの大幅な回復が見込まれている。
一方で、このような増産見込みを受け、大豆価格が低調に推移したことから、生産者の売り控えが前年度より顕著であり、パラナ州では、例年であれば9割近くの販売が終了している時期にもかかわらず、いまだ収穫量の44%しか販売されていないと報告されている。
マトピバ地域の生産量、大幅な回復を見込む
マトピバ地域の大豆生産量は、前年度比83.9%増と前年度の大幅な減産からの回復が見込まれている(表6)。このうち、トカンチンス州は、一部地域で害虫の発生やアジアサビ病による影響が報告されたが、良好な気候が後押しし、生産量は前年度比67.3%増になるとみられる。
・アジアサビ病(病原体:Phakopsora pachyrhizi)
大豆の葉が落ちるのを早め、豆の形成を阻害することから、大豆の生産性低下をもたらし、経営に大きな影響を与える疾病である。ブラジルでは2001年に初めて本病が侵入したことが確認され、その後、瞬く間に全国の大豆生産州にまん延し、2001/02年度および2002/03年度は、全国で大豆生産量が大きく減少した。効果的な対処方法が見いだせないまま、2007年1月29日、ブラジル農務省は植物衛生対策の一環として、全ての大豆生産州において、本病根絶のために大豆を栽培してはいけない期間(不栽培期間:バジオサニタリオ)を設置するよう農務省訓令第2号で指示した。
【佐藤 宏樹 平成29年7月14日発】
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