ベトナムのホーチミン市商工局は2017年7月1日、豚肉に続いて、鶏肉、鶏卵についても試験的にトレーサビリティを開始すると発表した。このプロジェクトには、市内および周辺各省の肉用鶏生産者339者、採卵鶏生産者53者、種鶏場27農場、食鳥処理場および鶏肉加工業者13者、鶏卵加工業者6者と、同市の小売店約1700店舗が参加する予定である。
消費者は、16年12月から実施されている豚肉と同様に、スマートフォンのアプリを使用して、商品に貼られたQRコードを読み取ることにより、生産地、生産者名、施設の搬入搬出日などの情報を確認できるといったものになるもようである。現地報道によれば、17年8月末までの試験期間を経て9月1日から正式運用へ移行する。
ホーチミン市でトレーサビリティが推進されている背景には、食品に対する消費者の信頼の確保はもとより、輸出に向けた安全・安心の確保がある。17年6月22日には、ベトナムの鶏肉加工販売会社のコユ&ユニテック社が、日本の農林水産省から家きんの加熱処理肉などの輸出許可を得て、ベトナム産家きん肉が初めて正式に海外に輸出されることとなった。こうした中、18年のEUとの自由貿易協定の発効に向けて、EU向けの基準に適合したトレーサビリティの構築を図りたいとの狙いがあると思われる。
なお、豚肉については、これまで量販店やコンビニエンスストアにおいて実施されてきたが、現地報道によると、市民が食料品などの生活必需品を購入するビンディン卸売市場など2カ所の伝統市場でも17年7月31日から開始するとしている。
しかし、養豚生産者は、トレーサビリティに参加している店舗向けに出荷する場合、豚の後ろ足にQRコード付きの識別リングを装着していなければならない。ホーチミン市から一定額の補助はあるものの、最近の豚出荷価格の記録的な低迷から、リング購入費などが負担となり、参加を見合わせる者が多くなっている。