デンマーク、2016年の養豚・豚肉産業の概要
デンマーク農業理事会は7月17日、2016年のデンマーク養豚および豚肉産業に係る統計資料を公表した。この概要を以下のとおり紹介する。
生産者戸数
養豚生産者戸数は、前年比12.6%減の3294戸となった。経営形態別に見ると、全体の40.5%を占める肥育経営が同20.9%減と減少率が最も大きい1335戸となった。これは、厳しい環境規制と子豚に対する国外からの強い需要がある中で、肥育を辞める経営体が多かったものと考えられる。次いで36.9%を占める繁殖肥育一貫経営は、同6.5%減の1215戸となり、繁殖経営は同13.3%減の497戸となった。唯一増えたのは育成経営で、同19.2%増の248戸となった。子豚に対する国外からの需要が強いことに加えて、子豚価格が2016年の後半に年末に向けて大きく上昇したことも育成経営の増加を後押しした。
規模別に見ると、育成および肥育経営では、1000頭未満の経営体が戸数全体の29.0%を占めるが、頭数は全体の2.1%にすぎない。次いで1000〜1999頭の経営体が15.3%(頭数シェア6.0%)を占めるが、13.0%を占める8000頭以上の経営体の頭数が43.3%を占めている。
一方、繁殖経営では、繁殖母豚800頭以上の経営体が23.9%を占め、頭数では55.2%を占める。次いで100頭未満層が19.1%(頭数0.3%)を占めている。
飼養頭数
総飼養頭数は、前年比4.0%減の1234万頭となった。2014年のロシア禁輸措置以降、市場は供給過剰となり、価格が暴落したことから、生産者が母豚淘汰により頭数削減を進めていたためである。
内訳を見ると、妊娠母豚は同2.7%減、繁殖仕向け雌豚は同1.4%減となっており、再構築の体制にはなっておらず、初生子豚(同5.2%減)、離乳子豚(同2.9%減)も減少している。肥育豚は、厳しい環境規制と子豚に対する国外からの強い需要があり、同6.0%減と、カテゴリー別では最大の減少率となった。
価格
生産者の肥育豚販売価格は、1キログラム当たり10.69デンマーククローネ(190円:1DKK=17.8円)と前年比4.8%高となった。経営体の1頭当たり粗利益は、肥育豚では40.2%増の150DKK(2670円)、子豚では同60.3%増の125DKK(2225円)と、2014年のロシア禁輸措置以降の供給過剰による価格暴落に抗するためにEUで供給削減が進められた中、輸出需要などにより回復した。
肥育豚の1戸当たり平均出荷頭数は7300頭であるので、1戸当たり粗利益は約110万DKK(1960万円)となる。
食肉処理場の労働者の平均賃金は、1時間当たり270.7DKK(4818円)となり、前年比2.1%増となった。労働時間を1月当たり148時間とすると、1月当たりの平均賃金は約4万DKK(71万円)となり、デンマークの食肉処理場が高い人件費の下で運営されていることが分かる。
2016年の小売価格は、全ての部位で前年を下回った。生産者価格の上昇は反映されていない。
輸出
豚肉および豚肉製品輸出は、前年比2.2%減の194万トンとなった。このうち、EU域内向けの割合は68.1%、域外向けは31.9%とおおよそ7:3の比率となっており、この10年間変化はない。
品目別に見ると、域外向けの方が多いのは副産物のみで、74.1%に達している。そのうち52.7%が中国(含む香港)向けとなり、次いで日本向けが20.5%となる。域内向けの副産物の31.1%は、ソーセージ等加工食肉の生産大国であるドイツ向けとなっている。
【調査情報部 平成29年8月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527