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韓国が米国産家きん製品の輸入停止措置を解除(米国)

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  米国農務省(USDA)が8月17日に公表したプレスリリースによると、本年3月に米国で発生が確認された高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に伴い、韓国は米国産家きん製品の輸入を一時停止していたが、今般、同国がこの輸入停止措置を解除した。

 米国は8月11日付で、国際獣疫事務局(OIE)に対し、同国がHPAIの清浄国に復帰した旨を報告したことから、同国産の家きん製品に対するHPAIの発生を理由とした貿易的な制限は原則として撤廃されることになった。実際に、同国産の家きん製品の輸入を制限していた多くの輸入国がこの報告をもって制限を解除しているが、全ての国がOIEへの本報告をもって自動的に解除するわけではない。日本も独自にリスク評価を実施した結果をもって制限を解除しているように、韓国の今回の措置も同様なリスク評価プロセスを経た結果だと考えられる。
 
 さらに、日本においては、米国でHPAIが発生した場合、米国との間で設定している地域主義(※)の考え方が取り入れられた家畜衛生条件に基づき、発生州からのみ家きん製品の輸入を一時停止するという措置を講じるが、韓国においては、同国全土からの輸入停止措置を講じている。
 USDAのプレスリリースでは、この点についても触れており、韓国の家畜衛生当局と引き続き地域主義の導入を目指し、協議を継続していくと言及されている。また、パーデュー長官も同様に以下のようなコメントを発表している。
 
  •  米国は世界でも最高レベルの鳥インフルエンザのサーベイランス体制を有しており、今回の発生事例でも即座に発見し、封じ込め、そしてコントロールすることができた。韓国当局がこの我々の防疫体制をよく理解し、将来的なHPAIの発生時には地域主義が導入される方向に議論が進むことを望んでいる。
 
  • 韓国は我々の重要な貿易相手国の一つであり、米国は引き続き韓国から最も信頼される高品質な農畜産・食料品の供給国であり続けたい。今般の輸入停止措置解除は我々家きん産業にとってはもちろん重要なことであるが、同時に第一歩目であることにも違いない。
資料:農林水産省ウェブサイト(http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/regionalization.html)
資料:農林水産省ウェブサイト(http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/regionalization.html)
 なお、過去に米国でのHPAI発生に伴う同国からの輸入停止期間が無かった直近年は2014年であり、同年には米国から1億2000万米ドル相当の家きん製品(鶏卵含む)を輸入しており、米国にとっては第10番目の輸出相手国であった。
 
 また、韓国国内では鶏卵の供給が不足していることから、同月9日付で韓国政府は米国からの鶏卵及び鶏卵製品(9つの製品カテゴリー)の輸入に対し、28000トンの無税枠を設定した旨を発表しており、現状では本年12月末まで本無税枠を活用できることとなっている。
 この鶏卵の供給不足は韓国で昨年末から断続的に発生したHPAIの影響が大きく、これを解消すべく本年1月には両国間で米国産鶏卵の韓国への輸入条件が初めて設定され、本年3月に米国でHPAIの発生が確認されるまでの間は実際に多くの鶏卵が輸出されていた。それを裏付けるように、2017年の年初来から6月までの韓国向けの鶏卵及びその加工品の輸出額は前年同期比1000万米ドル増の1200万米ドルとなっている。さらに、直近の出来事として、同国内の鶏卵から殺虫剤成分が次々と検出され、より一層の鶏卵不足が懸念されるおそれがあり、米国にとっては一時的かもしれないが、当面の間の有望な輸出先国となりそうだ。
 
 今回の輸入停止措置解除を受け、米国鶏卵ボード(American Egg Board)のAnne L.Alonzo会長兼CEOとアメリカ家きん鶏卵輸出協会(USAPEEC)のJim Sumner会長は以下のような共同声明を発表している。
  • 米国の鶏卵生産者は、米国の信頼でき、栄養に富んだ鶏卵を韓国の消費者や食品関係者に再び供給できる準備が整っている。我々は、USDAの動植物検疫局(APHIS)や海外農業局(FAS)といった関係部局が韓国政府当局とともに停止措置解除のために尽力してくれたことに特別な感謝を申し上げたい。また、将来的に韓国農林畜産食品部(MAFRA)が地域主義の考え方を取り入れてもらえるような継続的な取り組みにも期待したい。
【調査情報部 平成29年8月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533