ブラジル エタノール輸入に対する関税割当を導入
最終更新日:2017年9月4日
ブラジル政府は8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごと15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。エタノール輸入に対する関税は、エタノール在庫量の低下に伴い停止した2010年以来の再導入となるもので、2年間実施された後、見直しが予定されている。
なお、ニューヨーク粗糖先物相場(期近10月限)は24日、ブラジル政府の発表を受け、同国の砂糖・エタノール製造企業がサトウキビのエタノール仕向け割合を高める可能性があるとの予測から、1ポンド当たり14.02セントに上昇した。
導入の経緯
ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)によると、2017年4〜6月のエタノール輸入量は55万キロリットル(前年同期比3.5倍)で、ほぼ全量が米国産である。
ブラジルのエタノール生産量は、2015/16年度(4月〜翌3月)以降減少傾向で推移していることに加え、米国産エタノール価格が下落したことから、同国産エタノールの輸入量が増加していた。
現地報道によると、ブラジル農務省のブライロ・マッジ大臣は、基本的には自由貿易を支持する立場であるとしながらも、米国産エタノールの急激な流入から国内のエタノール産業を保護するため、一時的に今回の措置が必要であると判断した。トウモロコシ価格の下落によって、米国産エタノールが競争力を高めていることから、今回の措置なしでは、国内のエタノール産業が崩壊し、混乱を招きかねなかったとしている。ただし、2年後の見直し時には、需給は平常通りに戻るとの見解を示している。
業界団体の反応
UNICAは、今回の措置は国内の砂糖およびエタノール産業の要求に沿うものであると評価したものの、依然として、生産の安定化や投資の誘引といった、国内の砂糖およびエタノール産業に対する長期的な支援策が不足していると主張している。
一方、米国穀物協会(USGC)、再生可能燃料協会(RFA)などの米国のトウモロコシおよびバイオ燃料業界団体は23日、ブラジル政府の決定に対して連名で声明を発出し、今回の措置はブラジルの消費者の負担を増加させるとともに、両国に利益を与えている自由な二国間貿易の環境に甚大な影響を与えるとして不満をにじませ、今回の措置が早く終了されるよう働き掛けたいとしている。
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