酪農マージン保護プログラム(MPP)からの脱退が可能に(米国)
酪農マージン保護プログラム(Margin Protection Program:MPP)は、2014年農業法(Farm Bill)で新設された任意加入型のリスク管理プログラムであるが、保険費用が高額なこと、マージンの算定が全国一律方式であること、発動水準が高すぎることなどについて酪農家からの不満があり、課題も多いとされる。連邦議会や米国農務省(USDA)は、次期2018年農業法を議論する中で、より多くの酪農家にMPPを活用してもらえるよう、関係団体や酪農家などからの多くの意見に耳を傾けており、将来的な制度の改良が期待されている。
また、農業法の議論を待たずしても、USDAはこれまでも利用しやすいようMPPの改定を繰り返してきたものの、MPPの根幹であるマージンの算定方法や発動基準が大幅に変更されることはなく、MPPの開始以降、基準となるマージンが、最も高い保障水準である8ドルを下回ったのは、20期中6期(1期は2カ月単位)のみである。なお、その6期のうちの2期のマージンはともに「7.995」と、わずかに8ドルを下回っただけで、多くの加入者が恩恵をほとんど受けておらず、政府が想定していた発動状況となっておらず予算消化も驚くほど低くなっている。
このような状況の中、USDA農業サービス局(FSA)は8月31日、2018年のMPPへの加入受付を9月1日から開始し、現行の加入者が2018年から脱退可能となる旨を発表した。発表の概要は以下のとおりである。
− 2018年のMPP加入申請の受付けを9月1日から開始し、12月15日までとする。
− MPP加入希望者は最低年間100ドルの登録管理費を支払い、保障水準を選択する必要があるが、前年と異なる保障水準を選択することも可能である。
− MPP加入者は規定に基づき、酪農経営収益保険(LGM-Dairy)には加入できない。
− MPP加入者は所定の様式に記入し、保険料を添えて、各自が登録されている郡のFSA事務所に郵送することで手続きができ、事務所を訪問する必要はない。
− 高い保障水準を選択した場合には、加入時または2018年9月1日までに保険料の全額を支払う必要があり、FSAへ直接支払うほか集乳業者などを通じて支払うこともできる。
− 2018年からの脱退を希望する場合、今年12月までの期間中に登録しなければよい。脱退した場合、当然ながら、仮に2018年に補てん金の発動があったとしてもその恩恵を受けることはできなくなる。
− この脱退に関する決定事項は2018年に対してのみの措置であり、遡及適用はできない。
これまでは、MPPに一度加入すると2018年までの間、加入し続けなければならなかった。前述のとおり、MPPに加入しているとLGM-Dairyには加入できないことから、全米生乳生産者連盟(NMPF)は、USDAに対して、現状のようなMPPへの不満が多くある中で、オプションとしてMPPから脱退できるようにすべきだと訴えていた。
USDAも今般の発表の中で酪農家やこれら団体の声を反映させたものだと真摯にコメントしており、NMPFも今回の決定を歓迎すべきと評価し、酪農家からのMPPへの信頼を取り戻すべく、将来的なMPPの改善に政府・議会とともに尽力していくと言及している。
【調査情報部 平成29年9月19日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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